[映画紹介]
イギリスの田舎町の合唱団の
存続危機を食い止めようとする
指揮者や団員たちの姿を描くドラマ。
副題は「希望を紡ぐ歌」。
第1次世界大戦中、1918年のヨークシャー。
徴兵で団員が大幅に減少した合唱団の指揮者に選ばれた
医師ヘンリー・ガスリーは、
合唱団の建て直しに苦労する。
「マタイ受難曲」が得意の演目だったが、
作曲者のバッハが敵国ドイツ人なので変更を余儀なくされる。
ベートーベンもブラームスもドイツ人だから駄目。
ヘンデルは帰化した英国人だが、
元々ドイツ人なので、これも外される。
しばしば「ドイツ野郎」と敵を罵倒する。
最後に行き着いたのが、
英国の国民的作曲家、エルガーのオラトリオ「ゲロンティアスの夢」。
オラトリオとは、聖書の物語を題材にした、
独唱・合唱・管弦楽を含めた大規模な声楽曲。
エルガーの上演許可も取り、
練習に励むが・・・

ガスリーは敵国ドイツで音楽活動していたことから
町の人々の偏見と不信にさらされ、非国民扱いされている。
新しい団員は退役軍人や売春婦、ボランティア、徴兵を控えた少年たち、
歌唱力不足の団のオーナー、戦争帰還兵と心が離れた恋人。

その稽古の間も、
町には徴兵通知が届き、若者が新たな戦力として徴用される。
その一方で、戦死の公報も届き始める。
怪我をして戦場から戻って来た青年からは、
塹壕の悲惨さが伝えられる。
徴兵された若者は愛国心と戦意に燃えているが、
じきに戦場の悲惨さにさらされるのだ。

そして、上演の時、
若者たちは軍服を身につけ、
天使役は看護士の衣裳で歌う。
舞台では、若者たちが銃弾に倒れる様の演出がされる。
しかし、歌声は神を讃え、愛を賛美する・・・
魂の救済を描く音楽に反し、
現実の世界は戦争をしている。

コミカルな合唱団再生物語かと思ったら、
とてつもなく重い内容だった。
監督は「ミス・サイゴン」の演出で知られるニコラス・ハイトナー。
ハイトナーと4度目のタッグを組む劇作家アラン・ベネットのオリジナル脚本。
ガスリー役はレイフ・ファインズが務める。

合唱団のメンバーは英国演劇界の層の厚さを見せつける。
エルガーは「威風堂々」で知られる作曲家で、
どんな人格の持ち主だったかは知らないが、
この描き方は少々気の毒だ。
5段階評価の「4」。
TOHOシネマズシャンテで上映中。
今もウクライナで双方の国の若者の命が奪われている。
北朝鮮の若者たちは、
他の国の戦争に巻き込まれて
故郷を離れ、命を失っている。
国の指導者が間違った判断をすると、
将来のある若者たちの夢が奪われる。
