[書籍紹介]

昭和40年代に活躍し、
国際的評価の高い映画監督の白波瀬仁が、
25年ぶりの新作「妖奇」(あやかし)に取り組む。
25年も干されていたのは、
興行成績がふるわなかったからだが、
海外で白波瀬の再評価が高まり、
カンヌ映画祭のパルムドール受賞歴のある
「世界のシラハセ」の25年ぶりの新作ということで、
注目されていた。
白波瀬は、編集作業を終えたことを
プロデューサーの森田に連絡し、呼び出す。
真夜中に白波瀬宅を訪ねた森田は
悲惨な死に方をした白波瀬を発見する。
森田はフィルムを持ち出し、
東銀座の映画会社東活の試写室で初の試写会を開催する。
スタッフとマスコミ向けの試写で、
この時点で誰も作品を観ていない。
試写会が終わった時、
異常なことが起こる。
試写会帰りのスタッフが
晴海通りの歩道橋から車道に飛び下り、全員死んでしまう。
また、地下鉄東銀座駅のホームから
ホームドアを乗り越えて線路に飛び下りて、集団自殺。
レストランで食事をしていた
試写会帰りの人たちが
ナイフで自分の首を刺して死んでしまう。
歩道橋から飛び下りた20人、
地下鉄の線路に飛び込んだ19人、
近くのバルで自ら喉を刺して死んだ4人、
走って来た自動車の前に飛び出した1人、
首をくくって死んだ映写技師、
合わせて45人が試写会直後に死んでしまったのだ。
まさに「死写会」。
試写会に来て生命を落とさなかったのは、
警察の事情聴取を受けていた森田と、
急死した字幕翻訳者への追悼文を
ロビーで書いていた新聞記者の矢部誠、
字幕翻訳者の死の連絡を受けて
試写会場を出た映画雑誌編集長の如月奈々、
二日酔いで試写会場のトイレで嘔吐していた映画評論家の蔵元悟、
そして、途中で寝オチしてしまった映画雑誌編集者の里中凪、
5人だけだった。
5人の共通点は、映画を最初から最後まで通して観ていないことだ。
実は、この映画にまつわって
既に奇怪なことが起きていた。
映画のプロデュースをしていた白波瀬の妻の自宅風呂場での死、
主演女優の睡眠薬飲み過ぎでの自殺とも思える死、
昔白波瀬の愛人だったといわれている字幕翻訳家の小岩井登代子の死、
そして、監督本人の死、
映画会社東活は、
これらも宣伝材料に使うつもりだった。
試写会で映画を観た人々がまとめて自殺。
その原因は何か。
集団催眠が疑われたが、確証はない。
警察が残された自殺現場の映像を見ると、
奇妙な点が浮かび上がる。
凪と誠は、真相を突き止めることにするが、
その間に生き延びた蔵元と如月も悲惨な死に方をする。
刑事の栗川は、「妖奇」の公開は中止し、
フィルムは処分したらどうかと提案するが、
15億の制作費がかかっているものを
破棄することはできない。
凪たちの推理では、
かつての映画界にあったパワハラ、セクハラで
業界を追われた(もしくは自殺した)人間達の怨念が、
まさに昭和の監督であった白波瀬の新作の中にこもって
事件を起こさせたようなのだ。
配給会社の東活は、
事件を話題に利用して、
全国上映を数日前倒しして公開することにする。
凪たちはそんなことをしたら、
観客に何が起こるか、
映画館のまわりに死体の山ができないか、を危惧し、
デジタル変換して
全国250館に一斉配信する作業の前に
フィルムを燃やしてしまおうと、
東活本社に侵入するが・・・
五十嵐貴久によるホラー。
呪いのビデオをコピーして死が拡散する
「リング」という小説・映画があったが、
そのバリエーションとも言えるアイデア勝負。
題材的に、なかなか面白かった。