空が卒業して、そろそろ半年になろうとしています。

この夏……というか、ちょうど今、空は、同級生の中でも特に仲の良かった4人組での再会を果たしているところです。

まず、新潟に住むJくんの家にしばらく滞在し、そこに、長野県でアルバイト中だったT君が合流し、山形に移動してR君と合流し、遠野市にあるT君の実家に4人そろって「帰省」。
それぞれの家の間を、かなり気楽に泊まり歩くのも、学園文化(?)の一つです。
 

その間、久々のお気楽一人生活(夜は夫が帰ってくるけど)を楽しんでいた私のもとに、ある日、衝撃のLINEが舞い込みました。

 

「Nです。(←空の同級生のお父さん。北海道在住)

 突然ですが、空君、熊のガラ(肘から首まで)要りますかね?

 子クマのもので、お肉付きになります。

 以前に標本が……なんてことを言っていた気がしたのですが。

 早めに連絡いただけましたら、冷蔵か冷凍便でお送りいたします」

 

熊のガラ……? お肉付き……? 冷蔵便……? つまり、子熊の生首が送られてくる……? ここに……? 

 

一瞬止まりかけた思考が、次の瞬間目まぐるしく走り始めました。

うん、確かに、空は欲しがるだろうなぁ。っていうか、狂喜乱舞だろう(空は学園にいたころ、生物の先生と、その辺で死んでいたタヌキや鳥の骨格標本を作るのが好きだったのです)。

 

しかし、その作業、どこでやるわけ? この家の中は勘弁だよね。外でやるのもどうかと思うよね。

っていうか、熊の肉とか毛皮って、燃えるゴミに出していいのか? 騒ぎにならないのか? 事件性を疑われたりして? 

確かに空にしてみれば熊の骨格標本を作れるとなったら貴重なデモノなんだろうけど……。

 

いやいやいやいや、無理よ。やっぱり無理。相談してどうこうの話じゃないわ。無理なものは無理。断らなきゃ!

 

てなことで、

 

「いやー、空は欲しがりそうですが、私はイヤだなぁー(笑)

 きっと欲しがると思いますが、母はこの家で熊のお肉を骨から外すのはいやぁああ!(笑)

 骨格標本も、この家に置くのは気が進まない~。 

 独立してからにしてもらいます^^  すみません!」

 

と返信しました。

でも、まあ、このことを空に黙っているもどうかと思い、新潟にいる空に「今、NさんからLINEが来てさー」とLINEすると、「ん、今、聞いた」と返信。あ、そちらにも話がいっていたのか、と思いながら「断ったよ」と言うと「うん、今、遠野に送ってもらえないか、相談中」と返ってきました。

 

なーにー⁈ いや、確かに遠野のT君の家には、広大な敷地があり、学園の敷地でやっていたことをできそうな雰囲気はあるけど、でもそこは、民家だからね?!

T君のところとは、親同士も仲良し。そこで早速T君のお母さんのA子さんにLINEして、

 

「A子さん、大変よ! かくかくしかじかで、遠野にクマが送られてくるかも!」

 

と伝えると、

 

「ええ! どうしよう! 熊は困る! だって捨てられない。それに、匂いがほかの熊を呼んじゃうかも。どうしよう。誰に断ればいい?」

 

と明らかにうろたえたようすの返事がきました。そこで、「わかった! 私のほうから断っておく!」と引き取って、Nさんに改めて「遠野にも送らないで」と断りのLINEを入れると、

 

「了解です。『熊だったらぜひ欲しい』と言われましたが、空君の独立を待ちましょう(笑)」

 

との返事が来て一安心。

 

何が「熊だったらぜひ欲しい」だ! 勝手に友達の実家にお取り寄せしようとしてんじゃねーぞ!

どうしてもやりたいっていうんなら、ほんと、独立してからにしやがれ!

 

……でも、将来、独立した空が、どこぞの住宅地で熊の肉を燃えるゴミに出して騒ぎを起こしたらどうしよう……と、不安がよぎる母なのでした。

 

いやいや、そこまで考えるのはやめよう。今日の苦労は今日にて足れり、です。ほんとの話。