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法廷で通訳をした時のお話です。先日、日本人妻とアメリカ人夫の離婚裁判の通訳をしました。妻側の弁護士は
「日本に20年住んでいた日本文化の専門家。英語も日本語もペラペラ」
という、アメリカ人の老人を連れていました。その男が、まあ、通訳に口を挟む、挟む。
「そのニュアンスは間違っている」
「それは違う。通訳はアメリカと日本の文化の違いをわかっていない」
裁判官から
「彼女は法廷の試験にパスし、法廷が雇った通訳です。これ以上口を挟むなら退廷を命じます」
と言われて、黙りました。しかし、私は休み時間に裁判官から呼び止められ
「妻側弁護士があなたの通訳内容について、短い苦情を読み上げるそうですが、よろしいですか?」
と、訊かれました。私は眉も上げず、
「No preoblem=問題ありません」
と返しました。こういう時は多くしゃべった方が負けです。後で知ったのですが、その弁護士は、法廷が使ったすべての通訳に対して、過去に抗議を提出していたのです。
夫婦双方の証言は進み、生活費の話になりました。裁判って、結局お金の話じゃないですか?
日本の実家に帰ってしまった妻に、夫は生活費を送ったと主張し、妻はもらってないと言う。そこで、妻は普通預金通帳の提出を求められました。裁判官は妻側の弁護士に
「送金の金額、日付を証言して下さい」
と、命じました。そこで弁護士は「日本語の専門家」の、助けを借りて、送金状況の説明をしようとしました。
ぜんぜん、説明出来ない。
日本の銀行の通帳は、西暦は使いません。2人は大いに狼狽えます。
「なぜ、なぜ、今年の5月から、いきなり年号が1になってるんだ」
そこで、私は裁判官に許可を求めてから、ゆっくりと説明しました。
「天皇陛下が交替になり、日本の年号が代わりました。1年とは、平成ではなく、令和のことです。令和1年は西暦2019年です」
その後、老人は貝のように沈黙を守り、妻側弁護士から通訳へ抗議が出されることもありませんでした。
画像は、ハローウィンのために息子が作った切り絵です。
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