なのに“なのにトラン”。
たまに見るテレビの"店の意外なメニューが旨い"っていう新企画。
確かにフレンチレストランのラーメン、うなぎ屋のカレー、喫茶店のマグロの中落ち定食はすこぶる旨そうだった。
言われてみれば蕎麦屋のカレーがが妙に旨かったりするのもはや不思議ではなく必然。
こないだ“よるのぱとろ~る”をしてた時に寿司屋のツマミが妙に居酒屋チックで実に悩ましかった。
それにしても、寿司屋でフライだのチーズ焼きだの、しまいには鴨ロースのオレンジソースってど~なのよ。
10年、いや5年前なら迷うことなく頼まない、いや二度と行かないかもしれない寿司屋だったかもしれない。
でも年のせいか腹づもりってのもどっちでもよくなってきたし、たいした拘りもなくなってきてしまい、
『旨いもんが飲み食いできればいいんじゃね?』
と最高の仕事がしてある小肌や絶妙な脂の乗り具合のマグロの赤身を切り捨て、手っ取り早さを求める様になったのも確か。
それでもそれらを注文する時の後ろめたさというか、やるせない抵抗感はというと
“中日に敗けて欲しくてあろうことか読売を応援してしまった秋の東京ドーム”の如し
な~に?
この悪魔に魂を売ったような罪悪感。
というわけでその日の“蛇の道のツマミ”の一品目はカキフライ。
寿司屋で揚げ物…。
天ぷらならまだしもパン粉をつけたフライとはこれいかに。
生牡蠣は置いてないのにカキフライはあるというリスク回避の企業努力、いや妥協の典型。

待つこと15分、僕の前に鎮座したカキフライは申し訳なさそうな素振りを微塵も見せない北の海理事長再選の面構えの様な堂々とした出で立ち。
なかなか大物である。
個人的には自家製的な具沢山のタルタルソースが欲しかったが贅沢は言うまい。
やけど覚悟で一口かじってみるって~と、外はカリカリサクサクで牡蠣の中心部は皿に乗せられ、運ばれる途中で火が入ったかのようなジューシーな美味しさ。
やるじゃん!
ハイボールが進むよ、中島君(板前のお兄ちゃん)。
二品目はポテトのチーズ焼き。
『さすがに寿司屋でそれはないわ~』
と思ってたけど登場したその堂々とした出来栄えは、新人のくせにふてぶてしさすら感じさせる水道橋の投手の様。
なんだか納得いかないけど中々旨そうではないか。

乗っかってるチーズが想像以上にトロッとして厚みがあって、まるで1個1300円の高級チーズハンバーガーに乗ってるチーズのよう。
一口…。
これまたシンプルでいて、全く期待を裏切らない味。
ハイボールが進むわ、中島くん(板前のお兄ちゃん)。
こんなもんばかり食べてた訳ではない。
始まりは寿司屋のあるべき正当なツマミをチマチマをやる宵の始まりだったのだ。
『lukeさん、今日はスズキが旨いッス』
と言われ、言わずとも好みの薄造りで供され、天気予報では明日は今年一番の冷え込み…となりゃ~熱燗でしょうが。

2枚すくってもみじおろしを乗っけて三杯酢にちょいと浸けて食べ、口の中にスズキの余韻を残したまま熱燗をキュッと頂きますって~と…
『日本人でよかった…』
と思うひとときなのであります。
身の締まった淡白な味に白身魚特有のなんとも言えぬ鉄臭さには日本酒ですわ、やっぱり。
僕はフグの美味しさは全てを食べ尽くした後の雑炊にしかないと思っていて、フグの刺身にはなんの魅力も感じてない若輩者ですが、これは間違いなくフグよりずっと美味しいに違いない。

そしたら“よかったらどうぞ”のタコの頭。
これ、寿司屋で顔を覚えられるとよく出てくるけどタコの足より好きかも。
中島くん、緑茶割り(お茶濃い目)がよく合うわ。

それにしても寿司屋で“よかったらどうぞ”って出てくる漬け物とか酒盗みたいなのって、これはどこからどこまでがサービス(タダ)なの?
ドキッとするんだよね。
お会計もそうだけど、砂肝とかホルモンが出てきたらどうしよう…って。
寿司屋でさすがにそれはないか。
何にしても蛇の道を辿ってみるのも悪くなさそうだ。