16年前、ペルーのアレキパから戻って以来たたんだままになった翼は、再び開くことはなく、いつの間にか失ってしまった。
日本の会社に入り、長い休みも取れず、海外に飛び出すこともなく過ごしてきた。
いや、行こうと思えば行けたかもしれないが、翼がないことを言い訳にしていたのかもしれない。
飛び出してしまったら、また放浪癖が再発するのも怖かった。
日本という籠の中で、会社と言う鎖で縛られながらも、それはそれで楽しく暮らしてきた。
飛び出したいという気持ちは、いつも心の奥底にあった。
でも、あえて封じ込めていた・・・。
そして、今、再び翼を手に入れた・・・。
いや、入れてしまった、と言うべきか。
サンフランシスコ行きのため手に入れた青い翼。
開くと、まだ真っ白で、無機質なまま。
これが、ヨレヨレになり、開くと、押されたいくつものスタンプから、旅先の匂いがするようになる日は来るのだろうか・・・。
いずれにしろ、これでどこにでも行ける。
翼よ・・・あれが・・・自由だ・・・。