フランスの新酒ボジョレーヌヴォーの解禁日は、11月15日(第3木曜日)
リヨンの北、ブルゴーニュ地方の小さなコミューンで生産されたワインの名称が、なぜこれほど知名度が高まったのでしょうか。ボジョレーのニュースを聞くと、日本はバブル時代のダサイ感覚をまだ引きずっているのだな・・という思いがよぎります。元はといえば、その年のワインを試飲するために出荷されるもので、高級ワインでも何でもありません。むしろ逆です。本当に出来の良いワインは正規の樽醸成を続けます。短期間発酵なので、軽くて若くてフルーティーな味わいですが、反面コクや深みはありません。
日付変更線を最初に通過するという日本の地の利を利用して、世界で最初に賞味できる国、というアイデアを考えたのは、相当な辣腕の電通マンだったのでしょう。そうしたイメージ戦略を駆使して、仕入れ値が安いワインを、なんとなくお洒落でゴージャスなワインにのし上げてしまったわけです。
ブログの素材にしようと思いついて、大手デパートに出かけました。 棚に並んでいるボトルの大部分はスペインワインが占めています。外国ワインのコーナーにも見当たらず、店員に聞いてみると、入荷の予定はないとのこと。今年は天候不順だったために、あまりいい出来ではないと聞いています。
昨年のボジョレーの売れ残りが2本、6ユーロ20セントの札の上に慎ましげに置かれていました。地元のポトル単価は安く、飛びついて買う人はおりません。スペインは世界最大の葡萄の作付け面積を持つ国。当然ながら自国産のワインを販売したいわけで、農業生産物のライバル国であるフランスに関税を払って輸入する必要はありません。
その足で地元のワイン専門店を2軒回ってみました。まず1軒目。ソムリエ資格を持つ女性オーナーの店で、何度かワイン講習会を受けたことがあります。ボージョレーヌヴォーを扱っているかと尋ねると、即座にNoという答え。「ワイン通の顧客には薦められないし、原価も売値も安く、1本あたり僅か50セントの利益では商売にならない」とのコメントでした。
もう1軒のショップ。産地の種類も豊富で、年代物のワインも揃えており、良心的な価格設定なので、常々懇意にしている店です。フランスワインはラックの下に2本あるのみで、ボジョレーには全く関心がない様子。 これらの店で扱っていない以上は、他は推して知るべし、どうやらボジョレーを派手に喧伝するのは、日本ならでは現象のようです。
スペイン南部においてボジョレーにあたるワインは「モスト」です。
白ワインの新酒で、熟成が始まった過程で醸成される炭酸分と葡萄本来の味が残っています。酒蔵に空き瓶を持参して、樽から直接注いでもらって買ったこともあります。郊外のアルファラーフェの町では昔からの形で売っている酒蔵が残っていることでしょう。近所の食料品店では、ペットボトル入りで売っていて、1リットル1ユーロ。酒蔵のラベルが貼られたボトルでも、せいぜい2ユーロ台が相場。 さほどアルコール分は強くないのに、発酵途上の若々しさゆえでしょうか、酔いの回り具合は早い気がします。
メルクリンZ 葡萄畑が描かれた貨車。
葡萄園とシャトー、色づいた秋の情趣が感じられます。