アートの世界では「光と影」が最近のキーワードらしい…?
というのも、前回記事に書いた「南蛮美術の光と影」に続いて
またも「光と影」という題名がついている美術展に行ってきたからです!
「プラド美術館所蔵 ゴヤ-光と影」展
於:国立西洋美術館
期:2011年10月22日~2012年1月29日
ゴヤといえばプラド美術館。
そのプラドから、日本では40年ぶりの公開という「着衣のマハ」を始め、
肖像画や版画、素描などがごっそり出展されていまして、
ゴヤだけを200%満喫できる美術展となっています
ちなみにプラド美術館の館長さんの話によると、プラド以外で
これほど大きな規模でゴヤ展を開くのは初めてだそうで、
しかもプラドのゴヤ専門家2人が監修した最新の研究結果を
展示に反映しているとの事なのですが、そういえば確かに
作品の解説文がどれも読み応えがありました!
じっくり時間をとって行かれることをオススメします(*^▽^*)
美術展のチラシにも使われている
「着衣のマハ」は
プラドだと「裸のマハ」と隣同士に展示されている作品。
日本で鑑賞できるのはと~っても嬉しいのですが、
「裸」と「着衣」はやっぱりセットで観たいのが絵画好きの人だと思うので
プラドを訪れた人の気持ちを思うとちょっと複雑な気分でもあります…
とは言え、はやり本物がオーラが違いますね!
モデルの女性の何とも言えない色っぽい目付きに惹きつけられます。
最近の美術展では、目玉作品は大抵最後の部屋に展示されている事が
多いのですが、今回は割と早い段階で観ることができますよ。
それでは気になった作品をご紹介していきます♪
ゴヤは18世紀半ばから19世紀にかけて、当時としては長命な
82年の実に波乱万丈な人生を送りました。
そんな人生が反映するかの様に絵画表現も多彩だと思います。
まず若かりし頃、スペイン王立のタペストリー工場で
下絵画家として活躍していた頃の作品。
どれも愛らしくて素敵なんですけど、気に入ったのはコチラ↓
「木登りをする少年たち」
まるで少年たちの歓声が聴こえてくるような可愛いらしい作品ですね!
子供っていつの時代でもどこの国でも変わらないんだなぁ。
愛らしい子供達なのですが、衣服は破れていて厳しい生活を
送っていることを語っているようです。
後の「黒い絵」シリーズとは極にあるような明るい作品。
(タペストリーにするんだから当然ですが☆)
そしてコチラはタペストリーの原画なのかわからないのですが、
18世紀末に取りあげた題材としては面白いと思った作品。
「猫の喧嘩」
「シャーッ!!」って聴こえてきそう(笑)
猫好きには堪らない絵ではないでしょうか(^-^)/
この絵、かなり大きいんですよ!部屋に飾ってあったら迫力でしょうね~
ゴヤは油絵と並んで版画も多くの作品を残しています。
実は今回の美術展が催されている国立西洋美術館は
様々な画家の版画作品を収集していることでも有名なんですよ♪
このゴヤ展にもたくさん西洋美術館から出展されています。
まずは<ロス・カプリーチョス>という版画集から
61番「彼女は飛び去った」
<ロス・カプリーチョス>という版画集には、ゴヤが見つめた
ひと癖もふた癖もあるような女性たちが描かれてますが、
この作品はとりわけ私にとってはなじみ深い作品。
敬愛する森村泰昌氏が作品で取り上げているからなんですね~
森村氏は他にも沢山のゴヤ作品を取り上げていて、
今回はその原画となる作品を幾つか見ることができたので
二重の意味で満足でした♪
こちらは油彩画の作品「魔女たちの飛翔」
晩年の「黒い絵」に見られるような雰囲気の作品です。
飛翔する3人の魔女たち(一見すると男性の様ですが)は、
抱える男性に知識を吹き込んでいるんだそうです。
胸に口をつけて「フーッ!」と息を吹き込む仕草をしています。
なんだか不思議な浮遊感のある絵ですよね。
そして同じく版画集<ロス・カプリーチョス>から
39番「祖父の代までも」
愚鈍の象徴とされていたロバを擬人化して
当時の社会を風刺した作品群のひとつ。
この他にも医者になったロバとか、面白い版画が
沢山ありましたよ。
「普遍的言語」
<ロス・カプリーチョス>43番のための準備素描
この素描はプラド美術館のもの。そしてこの素描を素に
版画作品
「理性の眠りは怪物を生む」が生まれまして、
国立西洋美術館からの出展作品が並んで展示されています。
眠っている男に襲いかかる怪物たちは悪夢だそうですが、
ちょっとした転寝の時にヘンな夢を見る事ってありますね。
実は今回、膨大な数の版画が出展されているのですが、
その中の
「戦争の惨禍」という版画集の作品は
まるで現代の
報道写真に通じるような、
実に生々しい描写の作品なんですよ…
そうしたら、プラド美術館の館長さんの話にヒントがありました。
「私はゴヤを『最後の古典的画家』であり、
『最初の近代的画家』だと位置づけています。
旧体制から新しい時代への転換期を生き抜いた画家が
抱えていた複雑さを、作品を通して知っていただきたい。」
ゴヤが生きていた時代のスペインは、フランス革命後に
ナポレオンが侵入してきて戦争が相次ぎました。
有名なコチラの作品↓「マドリード、1808年5月3日」
(注:今回の出展作品ではありません)
題材となった背景を知らずとも、何かを感じずには
居られない様な迫力を持った作品なんですが、プラドで見た時、
画家の複雑な思いが絵からひしひしと伝わってきましたね。
後に同じスペイン人のピカソが「ゲルニカ」を描きましたが、
民族の血がそういう気持ちを起こさせるのでしょうか。
会場入口で無料で配布されている読売新聞の特集記事に
プラド館長のインタビューが載っていますので、ぜひご一読を。
版画集<戦争の惨禍>18番「葬って、あとは口を噤め」
身ぐるみ剥がされて裸のまま放置されている死体…
<戦争の惨禍>44番「私は見た」(準備素描)
逃げ惑う民衆を見捨てて真っ先に逃げる聖職者と有力者。
<戦争の惨禍>11番「どうしても嫌だ」
ゴヤの版画は、それぞれの作品についている題名が絶妙です。
どれも版画の内容を深く考えさせます。
50番「可哀そうなお母さん!」
15番「もう助かる道はない」
5番「やはり野獣だ」
2番「理由があろうとなかろうと」
69番「無だ。そう言うだろう。」
全部ではありませんが、国立西洋美術館が所蔵している作品は、
HP
で公開されていますので見ることが出来ます。
最後に、ホっとする作品もご紹介しておきましょう。
ゴヤは宮廷画家でもありましたが、もちろん
宗教画も沢山描いています。
今回出展があったのはコチラ↓
「無原罪の御宿り」
実に穏やかなお顔をしたマリア様ですね。
天上の全能なる神がうっすらと描かれているのも
少し近代的な匂いのする絵画です。
暗い題材が多い絵画の中で、この絵の前でだけ
少しホッと出来た瞬間でした。
これだけの規模のゴヤ展は、次に見られるとしても
何十年も後になるのでは?と思わせる内容ですよ。
非常に混んでましたが、
鑑賞する価値大いにアリです