一歩を踏み出す勇気に拍手 | 長月式部日記

長月式部日記

さまざま思ふこと

今週、歌舞伎界にビッグニュースがありました。
長年断絶状態だった父・市川猿之助さんと和解の末、

香川照之さんが歌舞伎デビュー!

九代目・市川中車(ちゅうしゃ)として来年6月の歌舞伎の舞台に出演、
そして息子さんの政明クンも五代目・市川團子(だんこ)を同時襲名。
加えて、猿之助さんが二代目・猿翁(えんおう)を、そしてなんと
市川亀治郎さんが四代目・猿之助を襲名とのことで更にビックリ!
なんともお目出度いお話しではありませんか。
こんな事が本当に起こるんだと、まったくの部外者である
私でさえビックリの大ニュースでした。
でもこの決断には相当な勇気と葛藤があったことでしょうね。

誰もが認める演技派俳優の香川さん。
どの作品でもとても存在感があって、大好きな役者さんです。
最近なら「坂の上の雲」の正岡子規役は素晴しかったですね。
対して父・市川猿之助さんは、言わずと知れた歌舞伎界の名門
沢瀉(おもだか)家一門の第一人者。
猿之助さんが創めたスーパー歌舞伎が大好きで、
昔はよく観に行ったものです。
「ヤマトタケル」を最初に観た時の衝撃は忘れられません。
その後も「小栗判官」や京劇とのコラボ作品の「リュウオー(龍王)」、
「新・三国志」のシリーズ… どれもとても素晴しかった!
確か「新・三国志」には若き日の市川亀治郎さんも出演されてたはず。

香川さんが役者としての存在感をどんどん大きくされていくと、
本来ならば歌舞伎役者としても活躍されていただろうに…と
どうしても思ってしまうことがありました。
でも親子の事は、他人には計り知れません。
実は、少し前のテレビ番組で(NHKだったかな?)香川さんが
出演されていた故・松田優作さんの足跡を追う番組を偶然拝見しました。
(デビューした頃にお世話になったんだそうです)
その中で、猿之助さんに会いに行ったエピソードを披露されてまして、
息子じゃないと言われてとても悲しかったこと、そして自分の息子に
歌舞伎の道を開いてやれない悔しさを相当無念そうに話されていました。
香川さんには歌舞伎に対するそんな強い思いがあったことを知って
とても印象に残っていたのです。

だから、今回のニュースは本当に驚きましたね。
ということで、実はどうしてもコトの顛末が知りたくなりまして、
ワイドショーを録画して記者会見を拝見しちゃいましたあせる
(なんともミーハーな私…)

記者会見では少し硬い表情で早口で話す香川さんのお姿が。
時折お水をゴクゴク飲まれて、緊張度がこちらにまで伝わる様でした。
対して息子の政明クンは余裕の笑顔。彼は大物になりそうですヨ!
この会見で、真摯に気持ちを話す香川さんの姿に本当に感動しました。
閉鎖的な世界ゆえ、きっと反発も大きいことでしょうね。
でも歌舞伎界に挑戦するんだ、という決意は十分に伝わったと思います。
そして、お母様である浜木綿子さんへの感謝も。

浜さんへの感謝といえば、脳梗塞で倒れてから会見をするのは
恐らく初めてであろう、市川猿之助さんの登場もありました!
あの姿を世間に見せるのは勇気が要ったと思います。
その猿之助さん、病の後遺症から言葉がハッキリしない状態でも
「浜さん、恩讐の彼方に、ありがとう、ありがとう」と言う姿に、
猿之助さんの気持ちの一端を想像することが出来てまた感動。
そしてその姿を見て涙ぐむ香川さんに、こちらも思わず貰い泣きでした しょぼん

ジュラ紀まであと少し
左から、香川さん、政明くん、猿之助さん、亀治郎さん、段四郎さん

いや~、これはまさに奇跡のショットですね!!
でも、皆さんと~ってもいいお顔をされています♪
猿之助さんも会見ではニコニコされていて、お元気そうで嬉しいです。
段四郎さんは少しお痩せになったかな?
亀治郎さんと香川さんは以前から交流があったそうですね。
壇上では政明クンと亀治郎さんも仲良さそうで微笑ましかったです。
その政明クンは、キリっとしたお顔でこれまた将来が楽しみですネェ~

香川さんは今年の春から猿之助さんをご自宅で介護されているそうです。
会見でも「映画かよ!」という嘘みたいな展開ですと話されてましたが、
40年以上も断絶していた父と、しかも病を患っている人と同居する。
これは並大抵の決意では出来ないことです。
母・浜木綿子さんによると、3年位前からその決意を話していたんだとか。
そして息子さんの名前に、父も祖父も曽祖父の名前にもある
「政」の字をこの日の会見を予測して意図的につけたことも披露。
息子さんはすでに5歳から日舞を習っているそうです。
香川さんは沢瀉家の血を絶やしてはいけないと、長い間本当に
真剣に考えてこられたんですね。
そして息子の事も考えて、一緒に歌舞伎の初舞台を踏む。
これは応援せずにはいられないですよっ!!
絶対にチケット取らなきゃ!

ただ、私は女性なのでどうしても香川さんの奥様の事を考えてしまいます。
きっと相当悩まれたと思いますが、それはもう何度も何度も
話し合いをされたであろう事は容易に想像できます。
例えば中村勘三郎さん一家のドキュメンタリー番組を一度でも
ご覧になった事があれば、歌舞伎役者の奥様の役割が
いかに大変か、という事をご存知でしょう。
香川さんにとっても未知の道ならば、奥様にとっても同じ事。
そんな事も全て含めての香川さんの決断だったに違いありません。

受け入れる側の歌舞伎界、そして松竹の決断も大きいですね。
香川さんは映像の世界で出る時は、今まで通り「香川照之」として
名を通すそうですが、これも異例のことです。
香川さんの演技の実力も決断の要因とも思います。
型が大事な舞踊は無理かもしれませんが、いわゆる世話物というお話が
メインの出し物だったら、きっと素晴しい演技をされるんじゃないでしょうか。
(でも歌舞伎はダークな世界でもありますからね~
 きっと共演してくれない方々もきっといると思いますよ)
個人的には、いつか香川さん(イヤ、中車さんか)の「俊寛」が見てみたい!!
確か猿之助さんも演じられた事があるので、沢瀉家一門でも
上演は可能だと思うのですが…切に希望しますっ!

「俊寛」別離の名場面
ジュラ紀まであと少し
このお写真は勘三郎さん


長くなりますがもうちょっとだけ。
実はもう一つ、この襲名のニュースを見て思った事があります。
それは、亀治郎さんが猿之助の名を継ぐということ。
私は亀治郎さんはいつかお父様の跡を継いで、
段四郎の名を襲名するんだろうと思っていました。
でも冷静に考えると、この人しか猿之助の名は継げませんね。

では何を思うのかというと、猿之助さんのスーパー歌舞伎を
右腕として一緒に支えていた市川右近さんという存在です。
ただ右近さんは一番弟子ではあったけれど、血の継承を
一番に考える歌舞伎界にあってはどんなに頑張っても
猿之助の名を継ぐのは絶対に無理な話。 
どんなに強い師匠と弟子という絆があっても、
親子という血の絆には勝てないところがあるのだなぁと
当然なんですけどちょっと思うところもありました。
でも師匠思いの右近さんは大変に喜ばれていると思います。
それに亀治郎さんのお人柄や演技、そしてご活躍の幅をみても、
猿之助襲名はごく自然だと思いますね(*^▽^*)

ちなみに、香川さんの息子さんが襲名する「團子」という名は、
猿之助さん自身も子供の頃に初めて名乗った名前であります。
ということは、これで次の次の継承者は、もう政明クンに
決まった様なものでしょう。
(モチロン、まずは芸あっての名前ですけれど…)

それにしても、今回の記者会見の最後で猿之助さんが、
「隅から隅まで、ずずずい~っと御願い上げたてまつりまする~」
口上を述べた時には、後遺症を感じさせない歌舞伎の舞台の
台詞口調と声音に戻ってましたね~!
コレには感動のあまり鳥肌が立ってしまいました…
テレビの前で、思わず拍手です!
「ヨ、沢瀉家!!」

浜木綿子さんの母としての懐の大きさにもブラボーなんですが、
何より一歩を踏み出す勇気を出した香川さんを、
心の底から応援したいと思っています。