盛岡食いしん爺日記
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12月5日金曜日。
昨日から雪。
早起きしてカーテンを開ける。
私が見る今年初めての白い世界。
今日は最高気温もさして上がらず寒い日になるという。
しかし、雪を照らす陽射し。
陽当たりのよい所は日中までには溶けてしまいそうだ。
珍しく散歩に出た。
Le Temps Qui Passe · Laura Fyg
北国の街、盛岡の真冬の雪は、さらさらして風に舞う。
昨日からの雪は重い雪。
盛岡八幡宮に積もった雪は、どんどん溶け始めていた。
湿った雪は木々の枝に纏わりつく。
満開の雪の華。
空の青が白さを際立たせる。
さらさらの雪だとこうなりにくい。
日本海の湿気が雲となり、
奥羽山脈を越えてここにまで降る。
テレビの天気予報の映像を思い出す。
昔は天気図だけだったが、今は雪雲が動く。
運動会や遠足の前のてるてる坊主は、
今もぶら下がる時があるのだろうか。
しかし、パソコンやスマホなどの進化と比べ、
地球を相手にする科学は大変だろう。
朝から雪見もいいもの。
私の心の奥深くには真っ黒な桜の枝に纏わりつく雪のシーンが刻まれている。
小学生になったばかりの頃だと思うが、
静まり返った朝に雪の積もった予感がしてひとり外に出た。
青空と黒と白の世界。
口に両手をあてて「わぁ!」と叫ぶ。
枝からふわっと雪が舞い落ちた。
何度も続けた。
偶然のことなのか、
声が空気を震わせたのかは分からない。
ただ、そのシーンだけが残っている。
散歩して時計は10時。
珈琲が飲みたい気分。
境内にある「愛名亭茶欧」へ。
開店したばかりだ。
その日の一番乗り。
金曜の午前中。
会社でパソコンに向かう人、
店で仕込みを始める人、
働いている人達には悪い気がするが、
心は、とてもゆったり。
いつもはたいていブレンド珈琲だが、エスプレッソにした。
特に理由はない。
人は気分に左右されるものの様だ。
テーブルに置かれた途端に漂ういい香り。
表面のクレマの下に隠れた凝縮された濃厚な味。
ゆっくりと味わう。
苦味も心地よく感じる。
バックから本を取り出して読みたくなった。
文庫本を開こうとして気がついた。
今日は午後から忙しいのだ。
準備をしなくては。
そのために目覚まし時計の時刻を早めたのだ。
忙しさを忘れてしまう盛岡八幡宮境内の愛名亭茶欧。
直ぐに席を立った。
心地よい苦味を喉に残しながらやる気のスイッチが入る。
いつも切り替えが下手な自分にしては珍しい。
パソコンを開いてふと思う。
帰り道、雪の華と青空をすっかり忘れ、
見向きもしないで歩いてきた。
どうやら人の目とは、そういうものらしい。










