盛岡食いしん爺日記
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一昔前のこと。
東京や横浜でトレードショーがあり、
ブースに来場した関係者にちょっとしたプレゼントを渡した。
二十数年前の話。
数種類を用意した。
当時の人気は小岩井農場の製品や南部せんべいだった。
盛岡界隈を訪れた人がお土産に買って行った。
あの頃、南部せんべいの由来などをよく聞かれ、
色々と人に聞いたり、自分で調べたりしたものだ。
南部せんべいは岩手の中央から県北、青森の八戸周辺、
つまり旧南部藩で焼かれている。
小麦粉と塩と水をよく混ぜ練って出来た生地を焼く。
八戸では「せんべい汁」もあるが、
煮ても崩れにくい専用のせんべいを使う。
今日は、盛岡の仙北町にある「炉何煎(ろっかせん)」に。
そもそも旧南部藩は、八戸や三戸などの辺りに拠点を置いていた。
その後に盛岡へ移ってきたのだ。
藩では冷害で飢饉に悩まされ、
冷たい風に強いとされる小麦や雑穀の栽培に力を入れた。
起源は、南北朝の時代にまで遡るらしい。
改めてググるとAIが答えてくれる。
南北朝時代の天皇が南部地域を巡行。
何か理由があったのだろうが、
その時、南部家の家臣がそば粉やごまを使い鉄兜で焼いたという。
明治に入ると小麦粉を使う様になった。
諸説あるらしいがAIは有力な説として紹介。
とにかく600年もの歴史があり、
今も八戸地方や久慈、二戸などの岩手県北から、
盛岡界隈までせんべい店は多い。
三戸町でもせんべい店に寄ったことがある。
岩泉町の鳥居せんべい店では、
昔は、近くに十数軒の店があったと聞いた。
盛岡にも色々なせんべい店がある。
炉何煎は、私のお気に入りの一つ。
Isn't She Lovely · Stevie Wonder
店構えも中も落ち着いた雰囲気。
並ぶ様々なせんべいを見ていると、奥様らしい方が出て来た。
今までは、ご主人と話した事がある。
奥様とは初めてだ。
せんべいを選ぶ前に撮影やブログ掲載の承諾をお願いした。
すると、
「どちら様でしょうか」
と真っすぐこちらを見る。
「盛岡食いしん爺です」
答えるや否や「え~!」
両手で口の辺りを押えた。
喜んでいただき、
スマホで写真を撮りたいという。
普段は、「謎の爺」なので遠慮しているが、
私的に使いたいというのでスマホの方を向いた。
炉何煎は、昭和7年の創業。
2020年、TBSテレビの「つぶれない店」で紹介されたこともある。
スーパーマーケットの成城石井でも炉何煎を扱っている。
ここの小麦の胚芽入りの南部せんべいは、
袋を開けた途端に小麦が香る。
どれも美味しいので迷いながら選ぶ。
いつも買い過ぎてしまうので慎重に。
そして、忘れてはならない「うきせんべい」。
昔はあちこちで買えたが、一時は途絶えてしまった。
炉何煎では復活させて今も作っている。
とても嬉しい。
もち米を使い炭火で焼いて作り、手間暇かかる様だ。
うきせんべいは唇に触れると、もう溶け出す感じ。
「サクサク」というより「ふわふわ」が合うかもしれない。
その日は、もう売り切れていたが、はじきものがあり即購入。
繊細で壊れやすいので発送に向かず、ここでしか買えない。
ふわふわで、ほんのり甘い「うきせんべい」。
味わっていると、子供の頃を思い出す。
同じ様なせんべいをよく食べた。
糸を通した針を皿に積み上げられたせんべいに投げる。
すると、せんべいが釣れるのだ。
何度も遊んだ記憶がある。
買物を終え、奥さんと色々話して店を後にした。
近くの駐車場から車を走らせ店の前を通ると、
まだ奥さんは店の前にいて手を振ってくれた。
今では、私にとってかけがえのない店になっている。














