盛岡食いしん爺日記
<音楽が流れます。音量に注意してください。>
9日頃から急に寒くなった盛岡。
10日の朝は、長袖に厚手のトレーナーを着こんだ。
ストーブを試運転、エアコンも暖房にしてみた。
9月の末まで暑かったののに。
北国の秋は元々駆け足なのに今年の秋はもっと短そうだ。
山の紅葉の便りが届いているが、
この急な寒さで、どうなんだろう。
考えているより行ってみよう。
11時半過ぎ、車のキーをポケットに。
盛岡から国道46号線を西に。
奥羽山脈をトンネルや橋で突っ切る。
秋田県の田沢湖町から乳頭温泉郷の方へ。
まずはランチ。
秘湯鶴の湯の別館「山の宿」へ。
鶴の湯へ行く途中にある。
Take The "A" Train · Oscar Peterson
木の力強さを感じる建物だ。
私のお気に入りの「お食事処 庵(いおり)」。
久し振りだ。
窓の緑、木の温もりと囲炉裏。
私は囲炉裏のある家には縁がなかったが、日本の原風景なんだろう。
ふと、浅田次郎の「母の待つ里」を思い出した。
ゆっくりと時間が流れ、穏やかな心持になる。
傍らの畳の上にお膳。
囲炉裏に鉄鍋。
山の芋鍋だ。
粘り気の強い山の芋が団子になっている。
食感もよく美味しい。
鍋にはきのこも野菜もたっぷり。
お~ネギが甘い。
朱のお膳にのってくるご飯。
ふきと野菜。
いい味だ。
ミズのコブ。
コリコリして美味しい。
秋田名物いぶりがっこと白菜の浅漬け。
これだけでご飯がすすむ。
少なめにしてもらったご飯は新米。
噛むほどに甘味。
来てよかったと、呟いてしまう美味しさ。
きのこもたっぷり。
すっきりとした汁も飲んでしまった。
食べることに夢中になれるって幸せだとしみじみ思う。
炭火でじっくり焼かれた岩魚。
さほど川魚は得意ではないが、これが美味しくて楽しみなのだ。
別館は平成になって建てられた。
スタッフの応対も素敵だ。
鶴の湯温泉さん、よくぞランチの場所を拵えてくれた!
と感謝したくなる。
「よいしょっと」と声を出して座布団から立ち上がる。
会計しながら尋ねた。
駒ヶ岳の八合目に平日は車で行けたはずだ。
大丈夫だった。
学生時代に駒ケ岳に登ったことがある。
花巻から友達と3人で列車で田沢湖に。
自転車で湖を一周した。
そこから見える駒ケ岳に行こうということに。
バスで8合目まで。
道は狭く、バスの窓に樹々の枝が何度もあたる。
駐車場から、すぐに登った。
駒ケ岳の山頂を目指したが男岳という山だった。
馬の背だったか定かではないが、
両側が切り立った崖の狭い道も歩いた。
そんなこんなで陽が傾いていきた。
登山者の方にそろそろ下りないと帰れないと教えられ、後をついて行った。
私達だけジーパンに特に荷物もない。
田沢湖スキー場のリフトで下りた。
スキー場から、道路を田沢駒の方に向かった。
既にバスはなく真っ暗だった。
歩き出してすぐ、車が停まった。
地元の人が田沢湖の町まで送ってくれた。
田沢湖町の駅から最終列車で盛岡へ。
その後、どうやって花巻に帰ったのか、記憶がない。
登山者の方からみれば、
無謀な3人で今にして思えば恥ずかしい限り。
翌年は、ニッカズボンと登山靴を買い、早池峰山などに登った。
10月10日の駒ケ岳の8合目からの展望。
北側の山の名は分からないが、
パッチワークの様に薄くなった緑に赤模様。
風は冷たく、厚手のトレーナーでも寒い。
標高は約1300メートル。
10分ほどで車に戻った。
スマホで調べると明日もかなり冷える様だ。
中腹辺りの樹々の葉は、色づく前に慌てていることだろう。
とにかく、思い立って家を出るのは変わっていないが、
歳を重ねて無謀なことはしなくなった。
九折の狭い道をゆっくり下りた。
若い頃に自転車で回った田沢湖に寄った。
神秘的な夕暮れ時の湖を車で一周し、盛岡の街へ向かった。
時間は4時。
夜の打合せにはゆっくり走っても間に合う。
このゆとりが大切なのだと今は知っている。