盛岡食いしん爺日記
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昨年のそろそろ冬も近いという頃、
一度訪ねたことがあるオープンしたての店があった。
階段を上がると、残念ながらランチの時間を過ぎていた。
それから、気がつけば1年近い。
私にとって今年7月頃から時間の流れが早くなった。
仕事に追われているわけではない。
パソコンを開いてもエアコンの風に身を任せ、ぼぉ~っとしている。
そんな時間が多かった。
盛岡の秋祭りが始まって少し秋の兆しを感じた。
陽が暮れると道鉢の草むらから虫の音がようやく始まった。
空も夏が過ぎようとしている。
官庁街での用事が済んだのは1時半頃。
桜山でランチにしようと思った。
そうだ!
気になっていたあの店に行ってみよう。
この桜山は、通称。
住所で言えば殆どが内丸。
岩手県庁、裁判所、市役所や警察の庁舎が並ぶ官庁街。
南の方は道路の向かいに桜山神社と盛岡城址。
この間の一帯に百件ぐらいの店が鮨詰め。
じゃじゃ麺の元祖「白龍(パイロン)」や老舗の町中華「白乾児(パイカル)」など
を始め老舗の喫茶店もある。
若い人たちが営む店も結構多いが、昭和レトロな雰囲気は続いている。
不思議な調和を保ち、賑わっている一帯だ。
Bill Evans - Like Someone in Love
その店はスパイス料理「香炉」という名だった。
その日のメニューを書いた黒板。
・サンマのカレーと野菜カレープレート。
・野菜カレー
野菜は、うたか自然農園産。
ジャガイモ、緑ナス、万願寺唐辛子。
田村種農場産の山白玉大豆。
とある。
初めて入った店で、味も知らない。
とりあえず「野菜カレー」を選んだ。
スプーんは石の上に置かれた。
窓の向こうに盛岡城址や桜山が見える。
その日はエアコンを使っていなかった。
少し空いた窓から涼やかな風。
ほかのお客さんが、サンマのカレーを食べたようだ。
「すっごく美味しいサンマだった。なんか爽やかな感じ。美味しかった。」
背中越しに聞こえ、
「さんまか・・・」と呟いた。
野菜カレーが登場。
お~!
ふんわりといい香りがして身体が反応した。
すぐにスプーンを持って食べ始めた。
だいぶ柔らかくなってきた自然光がよく似合う。
一つひとつの丁寧に調理された野菜にたっぷりルーをかける。
美味しい!
あまり豆類は得手ではないが、これは美味しい!
身体が喜ぶカレーだ。
旬の食材をスパイスが引き立てる。
食べ終わると店主らしき方が水を注ぎに来た。
その方の微笑みにも癒される。
自然に口から出た。
「サンマはいつまでですか?」
「今週までなんです。とても美味しいサンマが手に入って」
「あれそうですか、サンマにすればよかったかな・・・」
そう言えば、どうも近頃は冒険をしない。
安全な路を歩いてる。
以前だと、サンマを食べていたに違いない。
なんだか、情けなくなったが店主の微笑みながらの一言に救われた。
「旬の食材を活かす様にスパイスを合わせてます。」
頷くと、
よかったら、また今度来てみて下さい。
と続けた。
会計して階段を下りた。
「そうそう、また来ればいいのだ。」
なんだか、近頃、ぶつぶつと独り言も多くなっているかもしれない。
それにしても美味しかった。