盛岡食いしん爺日記
<音楽が流れます、音量に注意してください。>
週間天気予報にマイナスの表示が続く。
朝は、溶けた雪が凍る。
陽が落ちると、水たまりに薄氷が張り出す。
北国の冬。
野良猫たちは、時に停まったばかりの車の下へ潜り込む。
どうやって冬を越しているのだろう。
数日前、ある駐車場を横切るお腹の膨らんだ猫を見た。
悠々と歩いて行った。
さて、今日のランチはどうしよう?
そろそろ始まったかな、直利庵の「たちこそば」。
店の西側にマンション。
東側にも新しいマンション。
盛岡の中津川の東の地域で、
マンションの建設で景観が問題となった。
風情のあった造り酒屋の跡地の建築に対して声が上がった。
マンション群に囲まれた直利庵。
それでも威風堂々の存在感。
遠くからも老舗の味を求めて来る。
It's Beginning to Look a Lot Like Christmas Arpi Alto
月曜日の11時半でも賑わっていた。
テーブルが空き案内された。
壁に「たちこそば」と貼り紙。
直利庵の冬の風物詩が始まった。
先日、女将さんは「今年は遅くて」と話していた。
極上の白子ののるそばを待つ人が多い。
厨房から聞こえる「たちこそばあがりました!」。
次々と運ばれていく。
私の番がきた。
ご飯も頼んだ。
久し振り!
始めはつゆから。
出汁がよく効いた老舗の味。
たちこ(白子)の下でに敷かれたたくさんのネギ。
くさみのないたちこ。
口の中でとろけてしまう。
牡蠣そばは、まだらしい。
若芽の上に牡蠣がのる姿が浮かぶ。
テーブルに置かれると湯気にのって柚子が香る。
<まだ始まっていない牡蠣そば>
「もう少しらしく、次の楽しみ」
直利庵で凄いと思ったのは「鮎そば」。
子持ち鮎が丸ごと。
頭も軽く噛むとほろほろと崩れていく。
鮎の下には茗荷だ。
主役を引き立てる脇役の見事な仕事。
<秋に食べた鮎そば>
川魚の苦手な人を誘ったことがある。
「一度、騙されたと思って」と薦めた。
ひと口食べてニコニコ。
姿が崩れることなく、骨まで柔らかい。
季節を感じさせてくれる直利庵。
食べていると、寒い冬も「いいね」と思ってしまう。
何より、品のよいそばが美味しい。
伝統を守る厨房の人々が受け継ぐ、
つゆとそばがあっての季節の変わりそば。
満足してそば湯を飲む。
混んできたので早めに帰ろう。
おや?
貼り紙に「田野畑産の鴨南蛮」。
熱々で冷めにくいとろみ。
思うだけでたまらない。
忙しい最中、
女将さんが声をかけてくれた。
「今年は遅くて、お待たせしました。」
「待つほどに美味しさがまします。」
と答えた。
いつか、ゆっくり話を聴きたいと思っている。
年越しも近い、いよいよ繁忙期だ。
次に来た時、
何を食べるか迷うだろうな、などと思いながらの帰り道。
「直利庵のHPより」
創業は明治十七年。
百三十年を越える歴史を、直利庵は盛岡の町とともに歩んできました。
長い時間の中で、盛岡の町の風景は大きく変わりましたが、
「おいしいそばを食べていただきたい」という私たちの気持ちは何ら変わりません。おいしいそばを楽しみにして、暖簾をくぐるお客様に喜んでいただくために、わたしたちは今日も、明日も、そばを作り続けます。
直利庵