盛岡食いしん爺日記
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午後3時頃、盛岡から西へ。
雫石の辺りまで来ると、薄っすら雪景色。
奥羽山脈の麓を走ると雪が厚くなる。
ありね山荘の辺りは、吹雪。
さらさらとした雪だ。
車の温度計は氷点下5度。
日没前でもライトがいる。
照らす光は、風に流される雪煙に心もとない。
今シーズン初の雪道を慎重に走る。
新品のスタッドレスは固まった雪を噛む。
John Barry (1933-2011) - The Midnight Cowboy Theme
ありね山荘の温泉。
大きな窓、広い湯船。
若いお父さんと子供も。
小さな手で肩につかまる。
「何才ですか?」
「2才」と指を2本たてた。
お父さんが、
「もうすぐ3才です」と可愛らしい頭を撫でた。
初めて海水浴に行った時、
父の幅広い肩に片方ずつ妹とつかまった。
ぐいぐい進む父。
砂浜でこっちを見る母の姿。
2枚の白黒の写真の記憶。
高校生にもなると、
父と同じ背丈になり、口論もしばしば。
はっきり覚えているのは、
母に「勉強しなさい!」
と言われ、
「自分は、どうだったんだ」
「戦争中は女学校ではそんな環境じゃなかった」
背中で聞いて自分の部屋。
あの子もいつか逞しい父の背中を思い出すだろう。
外は猛吹雪。
十数メートル先の車に乗り込むと、
頭も肩も白くなっていた。
山を下る。
時々ホワイトアウト。
田園の広がる辺りまでくると小雪。
盛岡の街は、風は冷たいが晴れていた。
鍋焼きうどんが恋しい。
盛岡信用金庫の裏手の小道、愛染横丁にある「北田屋」。
「なべやきうどんの」旗。
いつも潜りやすい様に暖簾の一部が巻かれてある。
そろそろ店仕舞いの頃。
なんとか滑り込んだ。
旦那さんの撮った高山植物。
北田屋のご夫婦は、山が好き。
特に早池峰山には何十回も登ったそうだ。
近頃は、行っていないらしい。
私のよく行くそば屋さんでは、
みんな店の片隅に花を飾っている。
その季節を感じたり、
先取りした季節を想わせてくれたり、
いいものだ。
その日、一緒の方は天丼と決めていた。
敷きつめられたご飯とあう天ぷら。
綺麗で心の籠った優しい味なのだ。
鍋焼うどんが来た。
土鍋の蓋を開けるとセリの香りと、ともに湯気がたつ。
たまらない。
鍋焼きうどん定食。
北田屋では、定食としてそば、うどんや中華そばが食べられる。
サラリーマン時代のランチでは、好んで食べた。
正月がやってきた様だ。
ご飯、煮物と漬物。
見ているだけで嬉しくなる。
二人とも夢中で食べた。
そば湯らしいそば湯。
飲みながら奥さんと何気ない話。
これもご馳走。
近頃は、山には登らないが、
「もう年だから」と言いつつジムには通っているそうだ。
何せ12時間立ちっぱなしの仕事。
想像しただけで腰が苦しくなる。
値段もリーズナブル。
今宵は一番高い鍋焼きうどん定食。
地元の蕎麦粉や米を使う「北田屋」。
いつまでも続いて欲しい店の一つ。
「あ~美味しかった」と2人とも満足。
盛岡市中ノ橋通「北田屋」
盛岡信用金庫本店の裏手。