盛岡食いしん爺日記
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朝、目が覚めたが起きたくない。
昨日のバドミントンで関節が軋むことや昨晩何度も目が覚めたが、
そのせいだけではない。
ただ、このまままどろんでいたい。
もともと子供の頃から、
時々そんな日があった。
今日は、手帳が空欄なはず。
何十年も同じものを使ってきた。
箱に入った何十冊の黒い表紙の手帳。
一ページに週単位で予定を書けるタイプ。
数年前のものには朝も夜も細かい字。
先日、久し振りに見て笑ってしまった。
スマホが震え、メール。
仕事の話があるという。
ドライブしつつお茶でも飲みながら、と提案した。
盛岡駅の近くでひろい、西へ。
三十分も走れば小岩井農場。
宮沢賢治は、小岩井駅から岩手山の麓の鞍掛山まで歩いた。
夜の星空は近く見えたことだろう。
車の中でそんな話。
ニューシネマパラダイス~Medley~ · 古澤巌 · - · Ennio Morricone · 阿部篤志
小雨に樹々の緑はいっそう濃い。
杉林の中の紫陽花。
回り道して風光舎に向かった。
駐車場に着いた。
濃く深い緑に埋もれそうだ。
私の好きなアプローチ。
濃い緑色の雨が降った様だ。
気品のある白い紫陽花が際立つ。
風光舎の庭、夏。
命の力を漲らせ迫ってくる。
オーナー夫婦に迎えられる。
窓際の席が空いたが、テーブルにした。
窓に向き合えば、飽きずに外ばかり眺めてしまう。
仕事の話もしなくては。
「このメニュー、珈琲の解説が分かりやすいなぁ~」
私も改めて読むと、どれもこれも飲みたくなる。
雨粒をたたえた合歓木。
葉がキラキラ。
葉がこんな風に繊細な模様だったとは知らなかった。
ついつい夏に花だけを見ていた。
この間まで枯れている様な樹だったのに見事に葉を伸ばした。
一緒の人の珈琲の名前を忘れた。
スルスルと飲み、小さなため息。
「うん、美味しいなぁ~」
と私を見て言う。
バナナの風味が豊かなプリン。
私の珈琲は、「マンデリン タノバタック」。
説明書きには、
「インドネシアスマトラ島北部に住むバタック族の方たちが栽培するコーヒーです。
タノバタックとは「民族の大地」の意味で、その名の通り、大地の香りを感じさせる、力強く、豊かな一杯です。」
長く大きな島のスマトラの形と密林が浮かんだ。
中学、高校と地理が好きだった。
地図を眺めてるだけではなく、世界でどんな鉱石が採れ、
各国の貿易の様子、農業生産の数字も追った。
アメリカは勿論、フランス、ドイツという国も国力が豊かだと、
想像しながらメルカトル図法の地図を見ていた。
少しその話をすると、
一緒の人も地図に旅の行方を赤い線でなぞったそうだ。
香りが素晴らしい。
マンデリンの力強さと喉越しのよさ。
オーナーに言った。
「マンデリン タノバックを100グラム挽いてください。」
雑談交じりの仕事の話は終わった。
残った珈琲を味わう。
レジの傍にブルーベリー。
近くの農園で採れたそうだ。
会計をする時に二箱買って、一つはプレゼント。
オーナー夫婦に見送られ緑の中へ。
合歓木のてっぺんに花を見つけた。
これからしばらく楽しめそうだ。
そうそう、窓際の席で珈琲を飲むと、
カップの中に合歓木が映る。
その話をしたら、
来週も来たいとこっちを見た。