盛岡食いしん爺日記
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ブログを始めて8年が過ぎた。
盛岡食いしん爺日記にはそばの記事が多い。
サラリーマン時代から年を重ねるにつれそば好きに。
一昨日も直利庵へ。
西はマンション。
店の東にもマンションが完成間近。
周囲をマンションに囲まれても威風堂々。
さすが創業明治17年、130年を越える歴史のある直利庵だ。
新玉ねぎの季節になると、食べたいそばがある。
先月、ある方のフェイスブックの記事を見た。
気になっていた。
席に着いて壁を見ると、
「わらびとしどけの煮びたし」。
どういう風に調理すれば、この味になるのだろう。
二つの山菜のいい所を見事に引きだす。
続いて「新玉ねぎのオニオンそば」。
いつもと違い、そばを大盛りにしてみた。
どんぶりからして違う。
ちょっと息を吹いたら飛びそうな鰹節。
迫力がある。
鰹節の小山の下に敷かれた新玉ねぎ。
そのまた下にたっぷりのそば。
<因みに普通盛りは、こうだ>
さて、腕まくり。
箸で隠れているそばを引き上げた。
さらしな系の品のよいそばは、言うことなし。
つゆもオニオンそば用で爽やか。
シャキシャキの後に続く新玉ねぎの甘味。
山盛りの鰹節がさらに旨味を増す。
う~ん、美味しい!
春はあけぼの、
ようよう甘くなりゆく新玉ねぎは、
心地良きそばに、
薄茶だちたる鰹節の細く絡みたる春は、
新玉ねぎのオニオンそば。
一心不乱に食べ尽くした。
さすがに大盛りは食べ応え十分。
そば湯が置かれた。
蕎麦猪口もシンプルで素敵だ。
Love Castle. Chick Corea
そば湯を飲みながら、最近食べたそばを振り返ってみた。
サラリーマン時代は平気で重ねたざるそば三枚。
しなやかで風味豊かなそば、喉越し抜群。
十年ほど前、あるお爺さんから、
残ったそばの端切れの食べ方を教わった。
箸を直角に立てるとすぐ摘まめる。
冬は今や直利庵の名物「たちこそば」。
旬を待ちかねるファンも多い。
たっぷりのねぎの上に浮ぶ白子。
北海道では「たち」と呼ぶらしい。
白子は口に入れた瞬間、とろけて消えてしまう。
「鮎そば」
子持ち鮎で頭からほろほろと細かくなる。
直利庵の逸品で食べたら忘れられない味。
たっぷりの茗荷とは考えたものだ。
「高野豆腐」。
きめが細かく出汁を含み、
「こんなにも高野豆腐が美味しい物だったとは」と思った。
「すじこそば」
くさみのない筋子と沢山の海苔がいい。
春の気配がする頃には「牡蠣そば」
ぷりぷりの牡蠣。
大ぶりながら旨味が詰まっている。
ほのかに香る柚子。
下に敷かれた若芽が憎い~
山菜の頃にはたらぼ天。
レモン天もついたりする。
予想が外れ、酸っぱすぎない。
口直しに最高。
ふきのとうの天ぷらも。
「ウドの煮びたし」
上品な味わいと優しい食感。
「こしあぶらのごま和え」
これもすぐになくなる。
「ふきとあつ揚げの煮物」
ふわふわと踊る鰹節。
あっさり炊き上げているが、出汁がしっかり染みている。
暑くなると夏季限定の「野菜そば」
ピーマン、ニンジンと鰹節。
そばとの間に玉ねぎ。
直利庵の夏の風物詩。
秋になるとキノコ。
「白舞茸」は品のよいそばとよくあう。
「あられそば」
たっぷりのめかぶに、あられのような白い物はホタテ。
「冷やしのめかぶそば」
始めに美味しさを目から感じる。
続いて丼物。
まず天丼。
食材の味を活かした薄衣に特製のタレ。
一見濃く見えるが、そんなことはなく軽い感じ。
タレだけでご飯がすすむ。
「かつ丼」
とても美味しい直利庵のカツ。
飴色の玉ねぎ、玉子の具合も好きだ。
「鴨カレー南蛮」
鴨肉のつみれまで入っている。
ネギも甘く美味しい。
こちらは「かも南蛮」
存分に鴨とネギの相性を美味しく楽しめる。
「白舞茸のしょうが煮」
出汁のきいた汁に舞茸の旨味も。
生姜で爽やかな味。
汁も飲んでしまう~
「松茸の菊花浸し」がテーブルに置かれた瞬間、
綺麗なビジュアルにやられた。
松茸の風味が一層、引き立つ。
女将さんは趣味で蕎麦猪口を集める。
温かいとろろ蕎麦には海苔がたっぷり。
冷たいとろろも美味しかった。
変わり種の「カツ中華」も今や名物の一つ。
人気の中華そばにカツがのる。
不思議なことにころもは剥がれない。
初めての人は、たいてい少しの覚悟で挑む。
そして、ふやけずにサクッとしたカツに驚く。
盛岡で学生時代を過ごした人が直利庵でアルバイト。
4年後に郷里に戻った。
ブログで繋がっていたお母さんが盛岡に来た時、
おそるおそるカツ中華を食べてみたそうだ。
食べた瞬間、一抹の不安が吹っ飛んだ。
「とても美味しかった。女将さんによろしく」
とコメントがあったなぁ~
「カツカレーそば」
カレー風味の餡に美味しいカツとネギもたっぷり。
言うことなし。
そうそう、茄子の漬物も食べた。
噛むと、あの茄子の旨味。
美味しかった~
テイクアウトも。
持ち帰っても美味しかった。
そば、天ぷら、汁に薬味まで丁寧に詰められていた。
厨房のそばの小上がりからは中の様子が分かる。
いつも活き活きしている。
忙しい年末などでも、女将さんを筆頭に疲れを見せない。
味の伝承の中で、野菜そば、かつ中華など「かわりそば」なども誕生。
人気になってきた。
百年以上続くということは、想像以上に大変なことだろう。
きっと暖簾を下げた後、
仕込みなど周到な準備と味の進化を追いかけているのだろう。
選び抜かれた食材を見つめるスタッフの眼差しが浮かんだ。
その日も閉店間際まで、
直利庵の味を求めてお客さんが入ってきた。
女将さんに挨拶して外に出ると、すっかり暗かった。
それにしても美味しい新玉ねぎのオニオンそばだった。
賄いも、とても美味しいらしい。
などと思いながらの帰り道。