盛岡食いしん爺日記
<音楽が流れます、音量に注意してください。>
盛岡の街から40分ほど。
林の中にいた。
今年は道路に雪がなくすいすい走る。
樹々の先は空に真っすぐ伸びる。
見ているだけで心が和む。
Passacaglia - G.F. Handel/ Arr. by J. Halvorsen [PIANO COVER]
「兎みたい、かわいい」
と一緒の人が指差す。
十分に膨らんだ木の芽。
春は近い様だ。
ある人に誘われて雫石の「風光舎」を訪れた。
満席だったので玄関の椅子で待つ。
せっかくだから、と庭を歩かせてもらった。
さらさらとは違い、重い春の雪。
傾いた陽射し。
この時間、風は凪いでいる。
鳥の声もない。
駐車場から続けて車が出て行った。
戻って中を覗くとオーナー夫婦が、
お辞儀して手を軽く横に。
空いたようだ。
窓際の席へと案内された。
カメラを向けるには絶好の場所。
中は桜や花々。
薪ストーブのやわらかい温もり。
白湯が置かれ、オーナーがにこり。
「今年もよろしくお願いいたします。」
「こちらこそ」と答える。
確かに今年は初めてだ。
隣の人の珈琲の名前は忘れてしまった。
私はケニア。
湯気に絡まる香り。
ひと口。
深いコクを味わう。
ふた口めは酸味、甘みの調和を楽しむ。
豆の風味を活かす焙煎の技。
丁寧に淹れられた一杯の珈琲。
窓からの眺め。
傾いた陽射しが刻々と辺りの光景を変えていく。
それぞれの珈琲を飲みながら、
好きに外を眺める。
トーストを半分ずつ。
小麦を感じながら、また窓の外を見る。
今年は雪が少ない。
3月半ばのようだ。
帰りがけ、アプローチに種の殻が落ちていた。
「ひまわりの種だわ、どうしてここに」
確かにたくさん落ちている。
「ちょっと、聞いてくる」
小走りに中へ戻って行った。
私は、空を見ていた。
先に車に乗り込んでいた。
しばらくして助手席にやって来た。
今年は小鳥も食べ物に困っているようで、
ひまわりの種を窓際に置いたらしい。
餌付けはよくないので、そろそろやめようか、
と思っていたら、小鳥が朝に窓ガラスをつついたという。
それで、この冬は続けているそうだ。
話を聞きながらワンシーンが浮かんだ。
車を走らせると、
「流れていたクラシック、きっと小澤征爾さんの指揮じゃないかしら」
なるほど、そうかもしれないと思った帰り道。
いつだったか、窓から小鳥の写真が撮れた。