盛岡食いしん爺日記
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よく晴れた日の翌日、
久し振りの青空から一転、朝から雪景色。
彩度がなくなり、モノトーンの世界。
北国ではよくあること。
よく考えれば、
季節の移ろいのなんと素敵なこと。
魔法の様だ。
今日は先週からの約束の日。
ある人がランチをご馳走してくれると言う。
冬景色を楽しむゆとり。
それは、いいことがあるせいだろう。
午前10時半にメール。
場所が記されていた。
古澤巖「チャルダーシュ (2021 Piano Ver.) 」
場所は、盛岡のレストラン「和かな」。
玄関の辺りの雪を払っていた店の人。
「雪の中、ありがとうございます。」
「お二階へどうぞ」と微笑みながらの出迎え。
何度か来ているが、
一段上るごと、わくわくしては襟を正す。
まだまだ私には、気軽に来れる場所ではない。
好きなコースをどうぞ、
と言われたが、少し迷う。
「今日は遠慮せずに、どうぞどうぞ」
やはり、値段を気にしてしまう。
すると、
「私は、岩手短角牛ステーキの希少部位にする。」
「では、甘えさせていただきます。」
と同じコースのサーロインにした。
一組に一人の調理する人。
カウンター越しの話もご馳走。
サラダには自家製の大葉のドレッシング。
しっかり頭に刻んだ。
安比の舞茸。
厚みがあって食感がいいのだ。
クキワカメもあり、どんな味に仕上がるのだろう。
調理の準備をしながら、説明をしてくれる。
そして質問にも丁寧に答えてくれる。
岩手県北の田村牧場の牛を一頭買い。
ひと月の間、吊るし熟成。
自然の中で育った短角牛は、希少種で、
噛むほどに滲む肉の旨味。
食物連鎖の頂点にいる人間として
命に感謝して調理を見ている。
野菜も契約農家で栽培しているそうだ。
熱々の鉄板で野菜が一気に炒められていく。
野菜たちは、持ち味を保ちつつ、
南部鉄器の上で一つになる。
野菜のシャキシャキ感を適度に抑えるワカメのクキ。
安比舞茸も香りを放つ。
美味しい。
和かな自家製の辛し味噌。
何につけも合うので、ちょっと野菜に混ぜて食べてみた。、
今度は、パンチがきく~
隣の方はパン。
これも自家製だ。
提供する物はできる限り調理人たちが皆で作るそうだ。
サーロインの角が焼けていく。
味つけは塩胡椒とシンプル。
漂ういい匂い。
もうご飯が欲しくなる。
見ていると、しっかり胃の準備が整う。
表面が焦げ色に。
また一段と胃を刺激する。
今日の希少部位は、ランプ。
焼けた肉を皿に置きながら、
「私は、ランプが一番好きです。」
一緒の人が「ランプ、大好きなんですよ!」
醤油とゴマベースのタレ、イタリア産の塩と自家製味噌。
サーロイン。
始めは何もつけずに食べる。
スッキリとした脂の甘味を残し消えていく。
肉はやわらかいが、しっかりとした食感。
熟成された短角は、実に美味しい。
体にも優しい気がする。
命を熟成させ、より美味しくする。
そして調理する人の話を聴きながら、じっくり味わう。
私はガーリックライス。
鉄板の上にかすかに残る野菜や肉の旨味。
とことん吸い込んでいる。
「では、ゆっくりお楽しみください」と片づけを終えた調理人。
すると隣の人が、「もう、行っちゃうんですか」
笑って味噌汁の説明をしてくれた。
蓋を開けた味噌汁からいい匂いがする。
海老頭の汁の様な感じ。
そう話すと、ほかのお客さんにも言われ、
調べたそうだ。
どうやら、出汁に市使うカタクチイワシ。
小海老を好むらしい。
「今のところ、そうじゃないかと思っているんです。」
研究熱心だ。
「ありがとうございます。引き止めちゃって。」
三人で笑った。
去る前に、岩手は食材の宝庫で、
色々な食材を使えることは幸せだと話し、戻って行った。
プリンは、焼きプリンじゃない様だ。
爽やかで品のよい味だ。
珈琲を飲みながら、二人で少し話した。
幸せな時間は、あっという間に過ぎる。
「さて、帰りますか。」
「ご馳走になり、極上のランチになりました。」
会計しながらスタッフに聞いてみた。
年末年始は、混んだそうだ。
海外からの人達も多かったとのこと。
階段を下りながら、その人は、
スタッフの接客もいいスパイスだと言った。
さすが創業昭和35年の老舗。