盛岡食いしん爺日記
<音楽が流れます、音量に注意>
<こしあぶらのごま和え>
After All · Al Jarreau
ある方からメール。
「引越しそばは食べたの?」
「いえ、まだです。」
「だったらご馳走します!」
素直に「ありがとうございます。」と返事。
待ち合わせて、老舗そば屋「直利庵」へ。
今年は春が早い、もう山菜が出てるかも?
期待を抱いて先頭で暖簾を潜る。
壁の貼り紙。
うるい、しどけ、わらび、こしあぶら、たらぼとある。
山菜祭り!
やはり今年は競う様に芽を出している。
ずらりと並ぶ名前に少し戸惑う。
女将さんが「今年は早くて、一斉に出たんです。」と苦笑い。
たちこ(白子)や牡蠣もここ2、3年、時期が読めないと言う。
私は、食べるだけだが採る人も調理する方も大変だ。
ご馳走してくれる人は、温まりたいと「かも南蛮」。
確かに少し指先が冷たい。
始めに「わらびとうるいの炒めもの」
やわらかく、ひと味違ったわらびとうるい。
これは美味しい。
食べ始めると、「体の芯から温まる~」と語尾を伸ばし、笑顔が零れる。
「鴨肉も美味しい、つみれも最高だぁ~」。
こっちも唾を飲み込む。
「半かつ丼」。
直利庵の半かつ丼は、さほど値段が変わらない。
違うのは、ご飯の量だけ。
玉子にとじられたかつは、ご飯を覆い隠す。
かつと玉子をとりもつ飴色の玉ねぎ。
「こしあぶらのごま和え」をひと口食べて驚いた。
食感、香りといい、山菜の王者だ。
取り分けて食べたが、あっという間に無くなった。
私の頼んだ「たらぼ(たらの芽)天そば」。
まずは、そばを。
汁がほどよく絡んで舌触り、喉ごしがいい品の良いそば。
大ぶりのたらぼ。
どんぶりいっぱいの長さで、半端ないボリューム。
つゆの中で緑になった。
綺麗な春の緑だ。
大きいが、決しておお味ではない。
うすごろもが、たらぼの旨味をぎゅっと包んでいる。
美味しい。
レモン天が添えてある。
揚げてあるせいか、酸味がほどよく抑えられ、
口の中が爽やかになる。
飽きることなく、たらぼを楽しむ。
満足の引っ越しそばになった。
そば湯を飲みながら、仕事の環境もだいぶ整ってきた事などを報告。
頷いていた方がそば猪口の裏を見始めた。
初めて見た。
帰り際、女将さん達に挨拶し、
小部屋や2階へ上がる方の玄関に
飾られたそば猪口を見て帰った。
明治17年創業、130年を越える歴史のある老舗。
ホームページの一節を思い出した。
直利庵は盛岡の町とともに歩んできました。
長い時間の中で、盛岡の町の風景は大きく変わりましたが、
「おいしいそばを食べていただきたい」という私たちの気持ちは
何ら変わりません。
おいしいそばを楽しみにして、
暖簾をくぐるお客様に喜んでいただくために、
わたしたちは今日も、明日も、そばを作り続けます。
外は、まるで冬の様な空気。
御礼を言うと、
「美味しかったよね、あなたも、いい仕事してね。」
いつになく真剣な眼差しに「はい」と言った。
冷たい夜風の帰り道だが、心身共に温かい。
今日は、心地良い「春の苦味」をたっぷり味わった。
しかし、いつもと違う春が気になる。
りんごは大丈夫だろうか・・・
直利庵(ちょくりあん)
〒020-0871 岩手県盛岡市中ノ橋通1-12-13