盛岡食いしん爺日記
<音楽が流れます、音量に注意>
「天ぷらとお酒の店 かつら」
Say It · John Coltrane
<音楽が流れます、音量に注意>
かれこれ10年前から気になっていた店がある。
駐車場を囲むフェンスと建物の間に路地がある。
その一番奥に見える灯り、「かつら」。
この広い駐車場は昔、花巻のバスセンターがあった場所。
路地の入口近くに緑の公衆電話ボックスがあった。
懐かしく思っていたら、突然アドレナリンが湧き出た。
スマホから電話してみると大丈夫だった。
路地に足を踏み入れた。
奥に進む。
前に立つと意外に大きく凝った建物だ。
膨らむ期待。
暖簾を潜り引き戸を開けた。
正面に天ぷらを揚げるカウンターがあり、左手には個室がある。
右手にはL字型に続くカウンターとテーブル席。
カウンター席に案内された。
なんだろう、とても落ち着く。
壁に並ぶ札を眺めて迷う。
旦那さんに聞いてみた。
すると「コースを選んでもらって、後は好きなものを追加しても」
「なるほど」
「2千円からありますが、どうでしょう」
「それでお願いします」
どうにも飲みたい気分。
ノンアルのビールを頼んだ。
海老頭の揚げものをサクサク。
そしてビール。
気分は上々で、酔いそうだ~
「焼売です」と奥さん。
「?」
初めての客の意外な顔に慣れている風だ。
かつら特製の焼売だった。
海老と銀杏が揚がった。
てんぷらは、ころもが食材の旨味を閉じ込める。
銀杏は久し振りだ。
熱々で美味しい。
稚鮎とアスパラ。
品のいい苦味とアスパラの甘味。
いい組み合わせだなあ~
次々お客さんが部屋に入っていく。
もう10人近いだろうか。
笑い声が漏れてくる。
奥さんが言った。
「皆さんの声が聞こえて嬉しいんです。」
近頃は、客足が戻りだしてきたそうだ。
テーブル席にも若い人が4人来た。
早速ビールで乾杯、いい具合の賑やかさ。
2人はどんどん忙しくなるが、連携して注文を見事にこなす。
そして笑顔をたやさない。
旦那さんが、
「コゴミとブロッコリーとキスです」
今シーズン初のこごみ。
かつらの天ぷらは、小さめ。
だから多くの味を楽しめる。
魚、野菜や今日から出すという山菜から、ひと手間かけたものまで。
次はシイタケと鰯のつみれの大葉巻き。
小さなタマネギも。
さつま芋。
まだ、かき揚げも出るという。
ご飯とみそ汁を頼んだ。
奥さんが古代米ですとカウンターに置いた。
花巻は雑穀の栽培が盛んだ。
食べてみて驚いた。
粒を感じ、もち米の様でもある。
炊き方だろうか。
とても美味しい。
味噌汁はシジミ。
たっぷり入っていて嬉しい。
漬物も箸休めにいい感じ。
かき揚げは2種類。
これまた美味しい。
白魚を追加。
今日のお薦めを見て、これは食べたいと思っていた。
またお客さんが入ってきた。
おばあさんと娘さんだろうか。
カウンターの端に並んで座った。
幅広い年代が楽しんでいる。
それぞれに邪魔にならない笑い声。
おしまいに銀鱈のみりん漬け。
表面や皮に染み込んだみりん。
中はふんわり。
ご飯がすすむ。
ほぼ満腹なのにお代わりを頼みそうになった。
デザートはアイスクリームの天ぷら。
温かい中にほどよい甘さ。
旦那さんと奥さんは、
忙しいのに、それぞれのお客さんをよく見ている。
きっと長く苦しい時期から、
ようやく戻りつつある賑やかさに、喜びを感じている様だ。
お客さんも久し振りに顔を合わせて乾杯。
楽しそうだ。
花巻の路地の奥深くにある「かつら」は、心に染みる店だった。
もっと早く行けばよかった~