盛岡食いしん爺日記
<音楽が流れます、音量に注意>
薄曇りながら暖かい昼下がり花巻へ向かった。
近頃は滅多に東北自動車道を使わない。
国道や県道を南下する。
目指すは花巻「茶寮かだん」のお雛様。
Once Upon A Time In The West (Ennio Morricone) cover
Piano: Adi Mehic Vocals: Steffi Vertriest
国道4号線に出たら南へ。
盛岡から殆ど街並が連坦する矢巾町、紫波町を抜ける。
道路の両側に田園風景が見え始める頃、花巻市の石鳥谷。
バイパスに入らず、旧国道を走る。
花巻との合併前は、石鳥谷は一つの町だった。
一直線の道路を中心に街がある。
どこまでも続く。
花巻の空港を過ぎる辺りまで、真っすぐの道だった。
石鳥谷を抜ければ花巻は近い。
茶寮かだんに着くとオーナーの一ノ倉夫妻は忙しそうだった。
初めて見る若い女性が案内してくれた。
早速、珈琲「ゲイシャ」を頼んだ。
まずはゆっくりしよう。
香りとほどよい酸味と苦み、個性的な味。
世界最高峰の一つと言われるゲイシャを気軽に楽しめるのが嬉しい。
ひと息ついて部屋を見回すと窓際にお雛様。
後ろから窓の光を受けて心地よさそう。
トイレに向かう。
その途中洗面所だった部屋を覗いた。
この小さな空間にも贅が尽くされている。
というより、建物を請け負った職人の技が細部までいきとどいている。
という感じだ。
この部屋と廊下を隔てる引戸のレールは木製。
ちょっとした所にも職人の技。
いつも感心する。
さて、メインのお雛様を見よう。
一年ぶり。
金色の屏風を背にして紅い毛氈に並ぶお雛様。
左側が土でできている花巻人形。
右側のお雛様は、賢治の妹トシさんが、
このお雛様を飾っている場所を訪れ遊んでいたという。
カメラを構えたり、
眺めたりしていると、
一ノ倉さんが通りかかった。
「そろそろ始めたことを連絡しようかと思ってました」
と微笑む。
今日は、いいタイミングで来た。
素朴な風合いの花巻人形は、温もり感があり見ていて飽きない。
隣のお雛様を前にすると、
宮沢賢治の家族が座り、楽しそうな光景が浮かぶ。
みんな笑顔で雛菓子などを摘まんだことだろう。
毎年、一ノ倉さんとそんな話をする。
荒廃しかけていた旧橋本家の別邸。
一ノ倉夫妻は私財をなげうち、
自らも毎日の様に通い、見事に復活させ「茶寮かだん」となった。
お陰で、いつでも中に入れ、ランチや珈琲を楽しめる。
本当にありがたい。
一ノ倉さんに言った。
「ずいぶん、お雛様も増えて華やかさが増しましたね」
柔らかな微笑みが返ってきた。
ここ何年か、色々なメディアに登場。
特にNHKの「ふるカフェ系ハルさんの休日」では、
たっぷりと紹介され、
全国から訪れる人も増えた。
ゆっくりさせてもらった。
台所の方に挨拶に行くと、若い女性がいた。
「お嬢さんですか?」と聞くと、
「孫なんです」
あ~そうだったのか。
忙しく立ち回る一ノ倉さんにもご挨拶。
「また、今度ゆっくり来ます。その時に色々と」
「はい、お待ちしています」
ゆっくりお雛さまを見てゲイシャを味わった。
春には、あるイベントを奥のギャラリーで開催したい。
さて花巻での仕事に向かうとしよう。
茶寮 かだん
〒025-0075 岩手県花巻市花城町11−12