盛岡食いしん爺日記
<音楽が流れます、音量に注意>
テレビでは、今年最強の寒波が来るという。
盛岡も氷点下10度近くの予報が続く。
その朝も凍てついた。
外に出ると頬が痛い。
陽射しが出て来たので昨年の秋から気になっていた店に向かった。
カフェ「SB50」。
Dream - The Pied Pipers & Ernie Felice Quarte
陽があたっても雪は粉のようなまま。
今年最強の寒波らしい。
最高気温がマイナス5度ぐらい。
それでも猫が歩いていた。
へこんだ誰かの足跡を辿って陽の当たる方へ。
足元を確かめながら、ゆっくり角を曲がって行った。
盛岡の昔からの商店街、本町。
昨年から、何度も通って気になっていた。
カフェと書いてある。
その日、近くに用事があり行くことにしたのだ。
中はカウンター数席と奥に小さなテーブル。
「こんにちは」と入った。
「いらっしゃい」とオーナー。
コーヒーを頼むと豆から挽き始めた。
ふわっと香る。
「何度も通ってましたが、何だろう?と思ってました」
「皆さん、そう言いますよ」と笑う。
元々小さなパン屋があった。
だいぶ前から、その2階の奥でカフェをやっていたという。
当時の写真が飾られていた。
「えっ~全く知らなかった~」
「近所でも知らない人が多いんです」とまた笑う。
色々あってパン屋さんも店を閉め、
建物も古くなり壊し、その跡地にプレハブの店をオープン。
正確に言うと「店を再開」。
以前の建物の2階の頃から、時々サロンを開き、
皆でゲームをしたり、小物などを作ったりする憩いの場になっていた。
新年には、ここで「福笑い」をしたと言う。
「80代のお祖母ちゃんが、張り切ってね」
「それは懐かしかったでしょうね~」
「凄く喜んでた、やってよかった」と嬉しそうに話す。
新築にあたっては、色々な届け出やらなにやら大変だったようだ。
でも、笑い話しで片付けてしまうオーナー。
外の寒さを忘れて話し込んだ。
「SB50って名前は?」と聞いた。
Secret Base No50
50代で始めたシークレットベース。
2階の奥の「隠れ家」だったが、今は道路から見えて気になる。
窓からの陽射しがカウンターに降り注ぐ中で珈琲を飲む。
疲れも癒えて時間を忘れる。
話は続く。
近頃、一人暮らしのお年寄りが銭湯が無くなったと嘆いているという。
特に冬場、自宅の風呂は寒いし、掃除も大変だ。
銭湯が街の中心部から消えた。
マイクロバスで送迎付きで風呂に入れた公営の愛宕山老人センターも閉じた。
ある人は、街中に一軒ある「梅の湯」にバスで通っているそうだ。
スーパー銭湯ではなく、顔馴染みと話をしたり、飲み物を飲んだりと、
コミュニティっぽい場所になっていた。
そこで入る風呂は格別だろう。
知る人ぞ知る近所の人たちがSB50で集い、世間話をする。
広く立派なホールではなく、小さいが温もりのあるコミュニティ。
まち作りのヒントは、こういう場所に潜んでいた。
珈琲一杯、400円で長居してしまった午後のひと時。
Cafe. SB50
盛岡市 本町通りと国道455号線の交差点の近く