Gipsy Kings Inspiration
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1月9日、盛岡食いしん爺日記。
雨混じりの小雪。
元旦から途切れなかったお詣りの列も少なくなった。
夕方に参拝に行った。
今年はいつになく長く手を合わせた。
灯りも少なく静かで、「縁結美神社」の辺りは薄暗かった。
この神社に赤い紐を結ぶと恋が成就したり、復縁したりするという。
結びながら復縁したい相手のことや、
願いがかなった後のことを思うといいらしい。
神社の裏、巨木の下にあるハートの石。
濡れて目立っていた。
復縁や恋心は、化石のようになっているが、
もう一度会って話してみたい顔がいくつか浮かんでは消えた。
石段を下るとまっすぐに伸びる八幡の通りが見える。
昼夜を問わず、ここからの展望が好きだ。
四百年前、今は青森県の三戸から、
武士や町人が盛岡の地に来て街づくりを担った。
今でも三戸町と呼ばれる一帯がある。
その頃の盛岡城下はどんなだったのだろう。
創業から四百年の橋本屋へ。
始まりは中津川の擬宝珠のある上の橋の袂だそうだ。
それで橋本屋。
新春らしい飾りつけがあちこちに。
ざるの上に干支の人形。
兎だけは紅の座布団の上。
いつも中に入って思う。
映画のセットの様な小上がり。
丁髷姿の人たちが酒を呑み、蕎麦を食べる姿が浮かぶ。
鍋焼きうどんにした。
昔懐かしい味。
取り皿で一度、冷ます。
うっかりそのまま口に運んで、あちち!
ゆっくり熱々を楽しもう。
橋本屋に来るたび思い出すことがある。
40代の働き盛り、連日深夜まで仕事しては区切りがつくと呑み会。
ここの2階で宴席があった。
テーブルに徳利がごろごろ。
中締めが終わっても、あちこちで呑んで騒いでいる。
ある先輩が、「残すのはもったいない、食べよう」
手のついていない〆のもり蕎麦を集めてくる。
飲んだ後の蕎麦の喉ごし。
美味しくてどんどん食べた。
3枚、4枚とせいろを重ねた。
先輩と2次会に行こうと立ち上がった。
すると、皆が「あれ、蕎麦がない!」「俺のもない!」
私と先輩の前に聳える8枚の空のせいろ。
「いゃあ~残すのもなんだと思ってさ」と先輩。
悔しそうに立ち尽くすある仲間の顔を今もはっきり覚えている。
彼は大の蕎麦好きだった。
一緒にお詣りした人は、あれこれ悩んで中華そば。
「木耳が入ってる!」と驚く。
中華そばを食べながら、
「昔からずっ~と飾っていたんでしょうかね~」
花巻にも江戸時代から続く「大畠屋」がある。
何百年も続くには理由があるのだろう。
シンプルながら美味しくて飽きがこないことと、
訪れる人へのちょっとした心配りなんじゃないか、
と勝手に思っている。
そんなことを話したら、
「そういう人を目指します」と返ってきた。