Beegie Adair / Night and Day
<音楽が流れます、音量に注意>
4時もちかくになって上田のちひろ菓子工房へ。
店の前は広い道路。
車が行き交う中で、その一角だけ静かだ。
100年も経った古民家をリノベーション。
スロープと手摺が整えられていた。
引き戸を開けるとオーナーのちひろさん。
「今年もよろしくお願いします!」
もうマスク越しの話にも慣れている。
ケーキの棚に残るのは1個。
すぐに洋梨のケーキにオーロラコーヒーとのコラボした上田小路ブレンドを頼んだ。
奥のカフェに上がると暖かい。
ペレットストーブの柔らかな温もり。
ひと組のお客さんと入れ替わり。
ゆっくり見回すチャンス。
小さな庭の数本の樹。
その向こうの道路の喧騒を忘れてしまう。
古民家の梁や柱も空間のデザイン。
洋梨のケーキと上田ブレンド。
艶々として見るからに美味しそう。
今日の最後のケーキをいただく。
たっぷりの洋梨。
甘さ控えめで、いい感じ。
台はクッキーのようで美味しい。
ここでは、日替わりで色々なケーキが作られる。
定番はカシスと洋梨かもしれない。
一気に食べた洋梨のケーキ。
珈琲を飲みながら、窓に向きあう椅子にもたれかかる。
外が暗くなってきた。
曇りガラスに映るカップ。
満たされた時間。
ある新聞に「ゆっくりできる喫茶店」という記事があった。
1981年には全国で約15万5千店あった喫茶店が2016年で約6万7千店。
今はもっと減っているだろう。
よく喫茶店で取材し、
珈琲を飲みながら「特ダネ」「裏話」などをゆっくり聞くらしい。
結びには、「世の中に、いい記事があふれるためにも、
ゆっくりできる喫茶店は栄えてほしい。」と書いてあった。
新聞の取材を何度か受けたが確かに喫茶店が多かった。
珈琲を並べて向き合い、ゆったり気分。
お代わりしたこともある。
社会人になりたての頃、先輩に誘われ喫茶店によく行った。
飲み会の時とも違い、じっくり話し込んだものだ。
ちひろさんから、お年玉。
年賀状にはんこをついてもらう。
するとトランプが出てきた。
きって裏にして「一枚どうぞ」。
表にダイヤでもスペードでもなく景品が書いてあった。
焼き菓子が当たった。
デコレーションのサービスもあるらしい。
「忙しい中、手間がかかって大変でしょ」と聞くと、
「でも、楽しいじゃないですか」と笑う。
ゆっくりして帰ろとすると見覚えのある木。
そうだレモンの木だ。
近寄ると可憐な花が咲いていた。
「昨年、2個なってましたよね」と聞くと、
「食べました」とまた大笑い。
今年は、もっと実りそうだ。
帰り際、「ありがとうございました。」
とショーケースに隠れるほど深く頭を下げる。
こちらも、何度も頭を下げながら店を出た。
窓の中の影が忙しく動いていた。
きっと片付けて明日のケーキ作りを考えるのだろう。
一国一城の主たちは、毎日、
考え頑張っいる。
食べる人の笑顔のために。
「あっ!」
自分の誕生日のケーキを頼めばよかったかな~
ちひろ菓子工房
〒020-0066 岩手県盛岡市上田1丁目20−5