HAUSER - Lascia Ch'io Pianga
<音楽が流れます、音量に注意>
「11月27日で、移転します。」
と連絡がきた。
開店して8年。
盛岡劇場向かいの「いなだ珈琲舎」。
その2日前の夕暮れ時に行ってみた。
八幡町の通りから南に歩くと料亭、老舗の魚屋などが並び、
盛岡文士劇で知られる盛岡劇場。
その向かいに「いなだ珈琲舎」がある。
私も8年通った店。
入ると、
「こちらへどうぞ」と左隅のカウンターに案内。
いつもの席だ。
いつも綺麗な花が飾られている。
モーニングが人気となり、
チーズケーキ、焼き菓子も始まった。
勿論、美味しい珈琲。
しだいに人の心を掴んでいった。
ひとつだけあるテーブルには一輪の薔薇。
深い紅のビロードの様だ。
「マンデリンですか?」
「はい」と答えた。
隣とはいえ、この店から離れる。
このカウンターの左端には朝の陽射しが差し込む。
とても綺麗なモーニングセットが映える。
その光景が終わる。
マスターもちよっとブルー。
この席の前で、彼が珈琲を淹れる。
それを独り占めして見る。
彼が創る、この小さな世界が好きだ。
鼻先に広がるマンデリンの香り。
豆を丁寧にピッキング。
外れた物の活用を考えたり、
珈琲に合うスイーツを研究したり、
焙煎は勿論、いつも頭には珈琲の事。
極みのシンプル。
雑味のない味が、するすると喉をとおり、
後はすっきり。
気がつけば残り少なくなっている。
次に来る時は新店舗。
ある方への贈り物にマンデリンを挽いてもらった。
近頃、思うのは、作り手の工夫.
色々な世界で職種は違っても日々努力している。
皆のひたむきな心。
そんな人達を見ていると、自分の心が揺れる。
自然に刺激を受けている。
もうすぐ、いなだ珈琲舎の第二章が始まる。