HAUSER - Lascia Ch'io Pianga
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とにかく肉を食べようと思った。
そう言えば、
「肉の米内」さんが移転し、新しくオープンしたはず。
着くと駐車場も広くなり、現代的な店構え。
入るとショーケースには惣菜が並んでいた。
「あの、焼肉は?」
「左側を奥に入ってください。」
細い路地の様だ。
先日、自分の記憶に十数分の空白。
小学生の時、トラックの荷台から転がり落ち、
気がつくと病院のベッドということが一度。
ラグビーもしていたが骨折は幾度もしたが失神したことはない。
長い間生きてきたが、初めての様なもの。
思えば9月から仕事が重なり忙しかった。
バドミントンの時間だけは確保した。
先週もコートに立ったが、寒かったが大汗をかき酷く疲れた。
先月末でひと山超え、雫石の鶯宿温泉に向かった。
湯船に首まで浸かる。
しばらくして額に汗。
上がろうと思い、足を踏み出してから記憶が消えた。
次の場面はロビーの椅子に座り汗を拭いていた。
しだいに左の耳の後ろ、頬、腰が痛くなってきた。
指の関節が擦り剝け血が滲んでいた。
「どうしてだろう?」
ペットボトルの水がない。
玄関に行くとフロントの方が、こちらをじっと見る。
車に乗り込みコンビニで停めた。
水とスポーツドリンクを買った。
左の肩が上がらなくなってきた
移転した米内の玄関は蘭の花で飾られ、
壁もテーブル真新しい。
仕切りの壁に向かって並ぶカウンター席に案内された。
ひとり焼肉にはうってつけ。
カルビとラムにレバーを焼く。
相変わらず綺麗な肉。
焼き野菜はボリューム満点。
煙は鉄板の両脇に吸い込まれていく。
前の店の中はいい匂いが漂っていた。
口の中で溶けていくカルビ。
ラムの脂が自然な甘さで美味しい。
火力を強くし、次々に焼く。
盛岡冷麺も。
艶々の麺を辛味なしで食べる。
いい喉越し。
コクのあるスープに辛味を入れると盛岡冷麺らしくなる。
少し酢を入れる。
まろやかで深みのある味になった。
焼肉と盛岡冷麺で体が温まった。
転倒した翌日、鶯宿温泉に菓子折を持って行った。
宿に自分の様子を聞いた。
倒れたのを見た人がフロントに来て「救急車を呼んだ方がいい」と言う。
急いで様子を見に行くと、私は服を着て顔の汗をタオルで拭いていた。
脱衣場を出て「髪を乾かしてなかった」と中に戻り、ドライヤーを持った。
「大丈夫です」と言い椅子に座り水を飲む。
今度はスマホがないと、また脱衣場に戻り、「車に置いてきた」。
会話もできるし、これなら救急車は必要がないと思ったそうだ。
空白の時間は、とりあえず埋まった。
米内の懐かしい看板。
前の店先にまで漂っていたいい匂いが蘇る。
確かにスマホがないと思い焦った記憶はある。
しかし、ひと月ほど前に行った時のことだと思っていた。
先日だったとは・・・
意識を失っても私は立ち上がり、
服を着て髪を乾かし、
スマホの所在を確かめていた。
身体の左側やかばい手の手首に傷が残る。
酷いのは左肩の裂傷。
明日も病院だ。
きっと空白の15分は、もっと長いのかもしれない。
とりあえず壁に空いた穴にベニヤ板で蓋をした様なものだ。
肉の米内
〒020-0885 岩手県盛岡市紺屋町5-16から
紺屋町5-31? ENEOS紺屋町SS向かいに移転