ドビュッシー Deux arabesques, L. 66: No. 1, Andantino con moto
<音楽が流れます、音量に注意>
旧町名葺出町。
老舗のそば屋、八百屋、紅茶の専門店などがある。
しょっちゅう行く街で、夕暮れ時もいい。
明るすぎない街灯に照らされる青海波の舗道。
この街は気がつけば足取りはゆっくり。
前は「六分儀」という喫茶店で、今は「羅針盤」。
45年続いた「六分儀」。
昼ご飯を食べた後、文庫本を持ってよく行った。
当時は、シャンソンが流れ壁にはベルナール・ビュフェ。
好きな「サーカスの女」も壁に飾られていた。
当時のオーナーが語っていた。
シャンソンが似合うと言われ、
レコードを買っては店に流した。
昭和の粋な喫茶店だった。
閉店した時は、言葉も出なかった。
ところが、東京の「蕪木(かぶき)」という珈琲とチョコレートの店のオーナーは、
学生時代を盛岡で暮らした人。
六分儀はとても大切な場所だったらしい。
だから名前が同じく航海に必要な羅針盤なのかもしれない。
中は当時の雰囲気そのまま。
訪れた人が寛ぎたい場所として、また自分の道を考える時に羅針盤。
たまたま、お客さんがいなかったので少し撮らせてもらえた。
普段の撮影は手元だけ。
メニューには珈琲とチョコレート菓子がある。
オリザと言う珈琲も気になったが、
ケニアと青森産のカシスのショコラタルトを選んだ。
思えば大昔の学生時代は、「ホット」と言い、
社会人になってしばらくして「ブレンド」と注文した。
少しお金があると、
ちょっと気取ってキリマンジャロかモカだった。
丁寧に淹れられたケニアの深い味。
苦味とコクと酸味のバランスがいい。
ケニア好きにはたまらない。
奥の方は見なかったが、
誰かがネルドリップと話していた。
しっかりと焼かれた台にたっぷりのショコラ。
滑らかで美味しい、カシスがきいている。
そしてケニアとよくあう。
盛岡には沢山の個性的な喫茶店、カフェがある。
私にとって、この上なく嬉しい事。
珈琲ツウじゃないが暮らしに欠かせない。
一日、数杯は飲んでいる。
近頃は誰かと話す場より、
疲れてほっとしたい時、もの思いに耽りたい時に行く方が多くなった。
場所は、その時々に合わせて選ぶ。
JAZZがいい具合に流れる店、
スイーツが充実のカフェや音楽もない静かな場所もいい。
いつも選ぶのに迷ってしまう。
この後に予定がなかったら、長居していたに違いない。
立ち上がった。
会計は小さな小窓からやり取り。
これも前と同じ。
帰る時、ドアの外に出れば「現実の世界に戻るんだ」と思ったもの。
さて、これから午後の予定をこなさなくては。
気がつくと一杯の珈琲とスイーツで湧いてくる元気。
羅針盤
〒020-0871 岩手県盛岡市中ノ橋通1丁目4−15