「The Rose」 手嶌葵
<音楽が流れます、音量に注意>
サラリーマン時代から続けて仕事で関わる人。
フリーランスになって知った人。
多くの人と呑み、話したり、出かけたり。
SNSで知り合った人も少なくない。
あちこちを取材して回り、
多くの人の手仕事を見て物語を聞いた。
勿論、色々な美味しい物を食べながら。
その日も花巻での仕事が終わり盛岡へ。
午後1時を過ぎていた。
街のはずれ、花巻空港に近い「まっさん」に寄った。
ランチのお客さんがきれたところかな?
なんて思っていたら、後から続々入って来た。
本日の日替わり定食。
サバの竜田揚げにした。
お盆も終わった平日。
サラリーマンらしき人が多い。
週刊誌、新聞、スマホと人それぞれ。
ランチは貴重な憩いの時間。
俯瞰でカメラを構えて、ふと思った。
「竜田揚げと唐揚げは違うのだろうか?」
食べてから調べてみよう。
カリッと揚がった鯖を箸で切り分けると、中はふんわり。
旨味が詰まっていて美味しい。
レモンを絞ると味も引き締まる。
ご飯がすすむ。
野菜もたっぷりでサラリーマンの味方。
背を丸めて黙々と食べる自分に気がついた。
思わず苦笑い。
今は、ランチの時間に縛られることもない。
辺りを見回すと働く人たちは、
家で食べている様な気がしてほっとするのだろう。
どのテーブルも和やか。
ひとりの人も寛いでいる感じ。
これが「まっさん」の魅力なんだなあ~
完食してスマホで調べてみた。
竜田揚げと唐揚げにさほど違いはない様だ。
今では、どちらも醤油やみりんなどで下味をつける。
そして小麦粉や片栗粉で揚げる。
ただ、竜田揚げは魚の臭みをとるため、
下味をつけるらしい。
さらにレモンを添える。
なるほど鯖の匂いが苦手な人にも食べられる。
「いかに美味しく食べるか」を昔から考えられていた。
顔を上げると半分ぐらいのテーブルは空いていた。
みんな仕事に戻ったのだろう。
お茶を飲んで「まっさん」を後にした。
国道から別の道を北上。
緑の田圃の稲穂が風にそよぐ。
もう実がついていた。
時節は過ぎ行く。
冬は田圃も白の世界。
春は一面に水が引かれ陽光に輝く。
田植えの後はどんどん緑は濃くなり、抹茶色。
これから稲穂が首を垂れ始め、黄金色の輝きはもうすぐ。
あちこちで稲が泥水に浸かってしまったり、
体温を超える猛暑だったり。
盛岡の街中で、近頃、何度もカモシカ、熊が目撃されている。
なにかが、狂い出しているのか?
そんな事を思いながら田園風景を眺めていた。
ふと浮かんだ宮沢賢治の「雨にも負けず」。
帰ったら、今宵は賢治の本を開いてみよう。