Ethan Dufault – California
<音楽が流れます、音量に注意>
私が思春期を過ごした花巻。
ここ数日間、盛岡から通っている。
あの頃の写真は少ないが、
思い出は山ほどある街。
花巻のまち散歩マガジン「マチココ」5周年記念、
消しゴムはんこ作家はたけださんの作品展にミニスタンプラリー、
ワークショップなども開催。
消しゴムハンコを作ったり、
思い思いのうちわを作ったり。
子供も大人も作り始めると無口になる。
大人は涼し気なデザイン。
子供達の発想は自由だ。
共催者として会場にいる。
二日目も遅めのランチ。
スタッフと花龍(かりん)に行った。
ミニスタンプラリーの協力店。
街中のあちこちに、
宮沢賢治の童話をモチーフにしたベンチやオブジェがある。
初めて来た時、花龍を「かりん」と読めなかった。
一見して敷居が高く感じるが、
入ると店の方々はきさくに声をかけてくれる。
中は落ち着いた雰囲気。
その日は小部屋に通された。
一緒の人は、
名物の味噌焼きおにぎりのセット。
コロッケや春雨サラダも美味しそうだ。
私は、焼きおにぎりつきの蕎麦にした。
八丁味噌ともう一つの味噌をブレンド。
見た目は真っ黒で驚くが、味は柔らかい。
中は、ふんわりとして美味しく、
やみつきになりそう。
この街で、よく焼き味噌おにぎりに出会う。
デザートを食べながらひと休み。
畳に両手をついていると向かいが、
「高校生も来ましたね~」と言う。
頷きながら、浮かんできた高校時代。
体育館に軽やかな音楽が流れている。
学生服を着てフォークダンス。
男子と女子が向き合う大きな輪。
相手と会釈して手を取り合う。
ひと踊りしては次の人にかわる。
向かいに転校生がきた。
手の先を握るとすべすべしていた。
するりと抜けてしまいそうで、慌ててきつく握った。
急にこっちを見た。
一瞬の事が長く感じた。
額に垂らした前髪が揺れていた。
大人びて見え、それまで感じた事のないときめき。
あれは、文化祭での事だと思う。
昔話をしたら、
「その後、その子と会ったんですか?」と聞いてきた。
「忘れた」と答えた。
遥か遠くまで長い時間を生きてきたものだ。
向かいが変わる度、
心の顔は、相手によって違っていた気がした。
ほどよい甘さのデザートだった。
花龍(かりん)
〒025-0092 岩手県花巻市大通り1丁目16-36