How Deep Is Your Love - Prague Cello Quartet
<音楽が流れます、音量に注意>
予約もせずに向かった。
秋田県湯沢市稲庭町にある佐藤養助商店「正心庵」。
門の前で襟を正す。
陽が降り注いでも綺麗だが、
やはり日影が似合う紫。
向かいには本店。
1時半近くに着いた。
満席だったが、少し待って入れた。
カウンターに座る。
ランチのコース梅にした。
「お待たせしました。」と柔和な笑み。
こちらを見て言った。
「1年と少し前にいらして、いただいたと思いますが」
驚いた。
さすが東京の有名店で料理の技を身に着けた方だ。
何か記憶の仕方があるのだろうか。
先付。
固めの豆腐に雲丹、山葵がたっぷりのる。
器に残った汁まですくった。
大根おろしは雪玉の様で涼し気。
始まりは椎茸。
鎌倉時代から続く、品の良い輝きの川連(かわつら)漆器にのる。
口の中に入れ、二、三度噛むと消え、
椎茸の風味が鼻腔を抜けた。
次は茗荷。
新鮮な茗荷の味がして溶けていく。
新じゃが。
ほくほく。
じゃがいもが喜んでいる様だ。
甘味も感じて頬が緩む。
初めて来た時より感激している自分。
茄子。
口に入れるとじゅわ~
そして消える。
ひとつは塩で、残りは天つゆに浸す。
次は南瓜。
二つに割ると湯気がふんわり。
薄衣が、しっかり南瓜の風味と甘味を包む。
子どもの頃から苦手だった南瓜。
今でも後回しにしてしまうが、
これは、もっと食べたいと思った。
鯛の大葉包み。
ふわりと白い湯気。
品の良い味に、にんまり。
稲庭うどんが登場。
コシと艶と喉ごし、三拍子が揃っている。
醤油とごまだれ。
前は、ごまだれをあまり使わなかった。
今は、たれだけを飲んでみたりする。
とろっとしてゴマの風味が強いのにしつこくない。
たっぷり浸してしまう。
海老が揚がった。
ふんわりと海老の香り。
絶妙な火のとおりで弾力と甘み。
,二尾食べられる竹のコースが頭をよぎる。
最後はさつま芋。
厚切りのさつま芋は香ばしく綺麗だ。
ゆっくり揚げられ、最大限甘みをひきだしている。
これはデザートなのだ。
心から満足して椅子から立ち上がった。
「毎度ありがとうございます。」
「美味しくいただきました。幸せ気分です」。
帰り道、料理好きのある人の話を思い出した。
「料理人は毎日の様に同じメニューを作る。
そのモチベーションはどこからくるのだろう?」
機会があったら、ゆっくり聞いてみたいもの。
天ぷら 正心庵
秋田県湯沢市稲庭町字稲庭81 |