盛岡食いしん爺日記
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花巻の夜。
行ったことのない店で食事をしようということに。
二人で夕方、街を車で走る。
どこがいいだろう、と迷走するばかり。
時間は過ぎていく。
「あっそうだ!」
助手席から声が上がる。
「あそこにイタリアンの店がある。」
何度か前を通ったという。
案内されて着いたのが、
「トラットリア イル・クォーレ」
Oscar Peterson Trio - Waltz for Debby
初めての店は少しわくわく。
昔々の学生時代。
東京になれない頃、
値段の分からない店は、どこも敷居が高かった。
喫茶店ですら緊張したものだ。
そんな話をしながら、店の駐車場に停めた。
今では忘れかけていた感覚。
まずはミネストローネ。
色とりどりの野菜がたっぷり。
メニューには当店自慢のスープと書いてあった。
確かに野菜の甘味がいい。
食感も優しく、体が喜ぶ感じ。
ブドウジュースを飲みながらパスタを待つ。
地元のブドウらしい。
濃厚な味わいながら後味がすっきり。
サラダも瑞々しい。
「アラビアータ」
トマトソースで、ちょい辛のようだ。
一緒の人は、添えられたチーズをたっぷりのせた。
「美味しい、オーソドックスでしっかりしたパスタだなぁ~」
とご満悦。
近頃は温泉通いで、先日も北上の瀬見温泉に入ってきたことを話した。
露天風呂はまだ閉まっていたが、いい湯だった。
「温泉好きは、昔からだっけ?」
子どもの頃は、好きではなかった。
旧盆の頃、父の実家に行く前に泊まった。
たいてい一泊だったが、退屈だった。
父はごろごろして温泉に入ってはビールや酒を飲む。
ご飯の仕度から解放された母ものんびりしている。
廊下の少し広くなった辺りや小さなホールに卓球台があった。
妹とは手加減しても続かない。
小銭をもらい射的のゲーム機で遊ぶ。
画面を動物が横切っていく。
丸い印があってそこを狙う。
当たるとパタンと倒れる。
飽きると宿の中を探索した。
そうこうしても時間を持て余した。
食べながら、そんな話。
その人は、両親とも忙しく泊まり込みの旅の思い出はないという。
確かにサラリーマンと違って自営業は大変だ。
私は、ペペロンチーニ。
テーブルに置かれるとオリーブオイルと焦がしたガーリックの香り。
アルデンテがいい感じ。
バランスのとれた料理だ。
ボリュームもあるのだが、もっと食べたいと思った。
食べながら時間を忘れて弾む会話。
向かいの人が「イル・クォーレってどう意味なんだろう?」
とすぐにスマホを持った。
便利な時代。
「心という意味なんだ。」
なるほど店の中は落ち着いた雰囲気で、癒される感じ。
どこでも店や料理の名前を一生懸命考えるのだろう。
心のこもった料理と接客に満足して会計。
その人は言った。
「近くなのでまた来ます。」
車に戻り調べてみた。
フェイスブックには、
「イル・クォーレとは”まごころ”
旬の食材・地元の食材を丁寧にお料理し、
お客様に笑顔になっていただけるよう
まごごろを持ってサービス致します。」
とあり、
インスタグラムには、
地元花巻でオープンして28年。
花巻の食材と花巻の風土をこよなく愛すイタリアンレストランです。」
と記されていた。
もう30年近い歴史のある店だった。
新しい店をみつけて美味しく話の弾んだ夜だった。