The Way You Look Tonight - Michael Bublé (cover by Arpi Alto)
<音楽が流れます、音量に注意>
南から花咲く便りに、待ちわびた北国の春。
今年は一斉に花が咲いた。
白い静かな世界は、彩り鮮やかに。
まるで魔法。
気がつけば岩手山も白く厚い上着を脱ぎ始めた。
小岩井も風が柔らかい。
途中で思い切り西へ曲がると、岩手山が正面から右に。
春は日毎に大地から山へ駆けあがる。
風光舎へ。
枝は、元気よく空に伸びる。
お気に入りのアプローチ。
カメラ片手にゆっくり。
既に色んな花が咲いていた。
しゃがんで春を撮る。
窓際の席に案内された。
どこまでも歩いたあの頃。
皆、肌も透きとおって疲れも一晩で忘れた。
大都会の中で春を楽しむ事を忘れ、ビルの谷間を歩いてばかり。
もっと大地を踏みしめ、
春を風を、
光を感じればよかった。
そう言えば、宮沢賢治は、岩手山麓をよく歩いたらしい。
鉱石を探したり、森を歩いたり。
彼は、若い頃から存分に大地の風と光を感じていたのだろう。
ゆっくりと流れる時間。
窓に写る光景は、変わっていく。
山吹の枝も色づいていた。
おや!
小鳥が窓の傍に。
消えかかっている雪の小さな塊り。
火照った身体を冷ましているかの様だ。
今の時期は、つがいで行動し巣作り子育ての準備。
オーナー夫妻が小さな図鑑を差し出しながら教えてくれた。
あっ!
こっちを見た。
その日は、ケニアとシュークリーム。
柔らかい風と光、小鳥たちと咲きだした花。
そして絵のような窓の前で、
深い味わいの珈琲と甘すぎないカスタードクリーム。
素敵な空間で幸せなひと時。
花も、樹々も鳥たちも忙しそう。
厳しい冬を越え外敵もいる。
大地の環境も変化し、そうそう、安穏とした暮らしではないのだろう。
命を繋ぐ事は大変だ。
ケニアに映る小枝。
これは、夏に花が咲く合歓木。
そろそろ帰ろうとして、席を立つ。
オーナーが言った。
「今日は、夕景が綺麗だと思いますよ」
帰り道、少し走ると岩手山はほんのり朱に染まりだす。
帰りに見た月。
今日、風光舎で静かに流れていたのは、
オーナー夫妻も私も好きな大貫妙子。
帰ったら聞いてみよう。
青春の頃が浮かんでくるに違いない。
それに浸るのも悪くない。