盛岡食いしん爺日記
<音楽が流れます、音量に注意>
父の背中を見ていた子供の頃、人のひと言で傷ついた。
平気な顔をしようとして歪んだ笑顔。
勿論、友達と時間を忘れて遊んだが、
悔しくて涙が零れた夕暮れの帰り道。
大人の自分なんて想像できなかった。
中学生の頃のメモ帳のような日記。
今読むと他人事のように笑う。
いつも悩んでいた。
長続きしない、他人を羨んでばかり、計画倒れの勉強。
年を重ねるほどに想い出ばかりが多くなる。
先日、仙北町の南部せんべい「炉何煎(ろっかせん)」の前を通った。
懐かしいせんべいを食べたくなった。
近頃、気になっても戻ることは滅多にないが、少し先で引き返した。
LABOR LIMAE TRIO :My one and only love
<音楽が流れます、音量に注意>
店の中は落ち着いた雰囲気。
並ぶせんべいの袋のデザインが変ったかな?
もっとシンプルだったような・・・
あれもこれもと欲しくなるが、自制心は身についてきた。
絞り込んで会計。
外に出ると中学生が歩いて行った。
楽しそうだ。
「きみたち、南部せんべいは食べるの、一枚どう?」
と心の中で呟いた。
家で待つ彼らのおやつは何なんだろう。
とっくみあいの喧嘩で泥だらけ。
それでも翌日には仲直り。
走って転んであちこちに擦り傷。
親に隠そうとして見つかり叱られた。
今、そんな話を聞かないのは私だけ?
さて、南部せんべいの話。
旧南部藩が拠点にしていた青森県の三戸町。
あの町で何軒かの南部せんべい店を見つけ立ち寄った。
薄めでやわらかく美味しかった。
岩泉町でも南部せんべい店があった。
そこのおじいさんに聞くと、
十数軒のせんべい店があったと聞き驚いた。
昔は皆のお菓子だったのだ。
今は種類も豊富でクッキータイプも。
家に帰る途中、2人に届けた。
「わぁ~久し振り!」
同年代は喜んでくれた。
クッキータイプのピーナツ。
2020年、TBSテレビの「つぶれない店」で紹介された「炉何煎」。
昭和7年の創業。
関東を中心としたスーパーマーケットの成城石井で、炉何煎を扱っているそうだ。
そのことを知ったのは、2年ほど前のこと。
小麦の胚芽入りの南部せんべいは袋から取り出すと小麦が香る。
サクサクとして味わい深い。
帰って珈琲を淹れ、しょうゆ味のごませんべい。
そして「うきせんべい」。
今日、一番食べたかったのが、これだ。
昔は、あちこちで食べたが、
ひと頃は途絶えてしまったらしい。
炉何煎で復活。
昔懐かしいお菓子だ。
針に糸を通し、魚をモリで突くように投げる。
針が刺さって釣り上げる。
そんな遊びをしたのが、この手のせんべいだったと思う。
ただ名前は違っていた気がする。
食べると覚えのあるサクサクの食感。
口の中にほのかな甘味を残して消えていった。