盛岡食いしん爺日記
<音楽が流れます、音量に注意>
不思議に仕事の締め切りは重なるもの。
あれも、これも進まない、
日程をとっていたバドミントンの試合も敗戦
自分だけが不幸を背負っている気になる。
夕方、パソコンを離れ部屋の中を歩き回る。
スマホが震えた。
長いつきあいの人の声。
「お~久し振り、飯でもどう?」
煩雑さから逃げるようにダウンを着た。
待ち合わせは7時に「かわ広」。
Ms.OOJA「さよならの向う側」
盛岡には北と南に寺院群がある。
南の大慈寺町、南大通りに連なる寺院を背にするような場所にある「かわ広」。
きっと昔から、
お盆の帰省客が鰻を食べたり、
法事などや墓参りの帰りに寄ったりしているのだろう。
そんな風に思わせる店の外観と中の落ち着いた雰囲気。
すでに待ち合わせの人はカウンターの端でお茶を飲んでいた。
「もう、頼んだよ」
「そうですか、何にしようかな?」
「鰻にしたら、ご馳走するから」
遠慮したが、店の人に「鰻重」を頼んだ。
近況を話すうち、天ぷら定食がカウンターに置かれた。
「あれ。鰻は私だけですか」
「うん、この間来て、食べたばかりなんだ」
「お先に~」と食べ始めた。
「ころもが、ふわふわだあ~」
確かに美味しそうだ。
シイタケや野菜も美味しいと食べている。
エビは甘いとニコニコ。
気が付けば、かなりの空腹。
ずっと部屋でパソコンや資料と睨めっこしていた。
昼はインスタントラーメンをかっこんだ。
天婦羅に見惚れていた。
しばらくしていい匂いとともにやって来た鰻重。
遠慮もほどほどにして、
「では、甘えていただきます!」
かば焼きは漆黒を背景に輝いている。
まずは、そのまま食べる。
続けて白いご飯。
噛むほどに甘いご飯、これにタレだけでもいける。
少しタレをかけ、山椒をふる。
この瞬間が好きだ。
ほどよく甘じょっばいタレ、かば焼きの匂いに山椒が香る。
箸の先から伝わるふんわりとした鰻。
口の中でとろけていった。
肝吸いには刻んだ生姜が入っていた。
「和食って、いいなあ~」と言うと、
「今度、白焼きを食べようよ」
もう鰻の白焼きを食べた記憶が朧気だ。
「いいてすね!」
子どもの頃の話をした。
私の父の実家は岩手県の南の町。
お盆には必ず行った。
よく昼時に皆で鰻を食べに。
ギラギラした太陽の下歩いて行くと、
店の軒に下がる鰻と書かれた小旗。
玄関のそばに木の丸い桶が置かれ、
とぐろを巻いているたくさんの鰻。
「こんなに、にょろにょろした物を食べるんだろう。」
と思っていた。
そのせいか、あまり好きになれなかった。
隣の人が笑いながら、
「今はいつでも鰻重はあるけど、昔は夏によく食べたなあ~」
学生時代友達とアルバイトや奨学金が入ると、
新宿に食べに行った。
あの頃は、友達と鰻を食べた後、
すくにラーメン屋の暖簾を潜ったものだ。
そんな思い出話に花が咲き、夜は更けていった。
かわ広
盛岡市南大通2ー2ー16