Aguas de Invierno, Orquesta Real de Xalapa, Esencial
<音楽が流れます、音量に注意>
10月3日、日曜日、晴れ。
「盛岡食いしん爺日記」の続き。
葛巻でクラフト市をあちこち回っていた。
「あっ!」
まだランチを食べていない。
気がつけば腹ペコだ。
午後2時も過ぎ食べ物系は、ほぼ完売。
「そうだ!」
平庭高原の方へ走り、10分ほどで「森のそば屋」
10数年ぶりに暖簾を潜る。
席が空くのを待つ間、2階で蕎麦打ちを見る。
「写真を撮ってもいいですか?」
窓越しに声をかけた。
「いいですよ、好きなだけどうぞ。」
お母さん達の優しい手。
柔らかだが力強い曲線を描く。
そば粉が、みるみる丸くなる。
次は大きな一枚板の上に。
丁寧に伸ばし始める。
時々、粉をまぶしながら。
一連の動作に無駄がない。
蕎麦をいつくしむような手さばき。
次々にできる蕎麦。
見ていて飽きない。
蕎麦餅は串を刺して。
呼ばれて下へ。
「ありがとうございました。」
「ゆっくり食べて下さい。また来て下さいね」
手を休め、返ってきた微笑み。
艶々の十割、手打ち蕎麦。
昔からの蕎麦を育て、水車で挽き、お母さんたちの手打ち。
何もつけずに食べると豊かな蕎麦の風味、強いコシに心地良い喉越し。
蕎麦の三拍子が揃う。
あっさりながら、出汁の効いたタレもいい。
山菜も頼んだ。
大根の漬物が、いい具合の歯応えで柔らかい甘み。
美味しい!
もっと食べたい。
「売って欲しい」とよく言われるそうだ。
囲炉裏端に見に行った。
「山女魚の塩焼きはね、強い炭火で立てて焼くの。」
「頭も食べれますよ。」
川魚の頭を食べたことがない。
そっと口へ。
噛むとホロホロと崩れて美味しい。
大満足で会計。
「また来てくださいね、よかったら裏の水車と学校を見てってください。」
親戚の叔母さんと話しているようだ。
どうして、ここに「森のそば屋」ができたのだろう。
スマホを取り出した。
昔は、全国各地にあった水車。
便利な世の中になっても、江刈川地区には2つの水車が残った。
蕎麦を美味しく食べたい一心で、昔からの作り方を守ってきた。
そば屋を企画した高家(こうけ)さんの案に、
「田舎の蕎麦が売れるのか」という声も。
そこで東京のデパートでデモンストレーション。
評判を呼び自信をつけた。
数年を経て平成初期に「高家領水車母さんの会」を結成。
古民家をリノベーションし、「もりのそば屋」を開店。
数年後には、農産物直売所を兼ねた農村レストラン「みち草の驛」も開店する。
2001年には物置になっていた江刈川水車を復活。
葛巻小の旧江刈川分校。
近寄ると目の前に昭和の世界
時間が止まったようだ。
ひょっこり子供達が教室から駆けてきそうだ。
スリッパまでそのまま。
じきに教室から先生が戻って来そうな職員室。
体育館に広げられた蕎麦の実。
古民家を活用し、昔からの製法で作る極上の蕎麦。
お母さんたちの力は素晴らしい。
葛巻という町に潜む人々の力。
暮らす人の物語は、日帰り旅を豊かにしてくれる。