哀愁のヨーロッパ/サンタナ
<音楽が流れます、音量に注意>
盛岡の街を歩いていて、ふと見上げた空。
秋の空高く、横切る電線の数々。
一本一本に役割がある。
しばらく腕を組んで見上げていた。
通りすがりのご婦人も空を向く。
若い女性は、こちらを見ないようにして急ぎ足。
これ以上見ている図太さもない。
歩き出した。
たぶん昭和の頃から、こんな感じの空なんだろう。
だらりとした黒い曲線の中を一瞬で、
遥かな距離を走り回る電流。
電波が空から飛んでくる時代。
もし、目に見えたなら、
隙間なく空を行き交っているのかもしれない。
デジタルを支える黒い曲線。
考えているうちにランチの約束の時間。
急ぎ、待ち合わせのホットライン肴町の入口へ。
先に着いたらしく手を挙げている。
「遅くなりました。」
「いや、まだ5分前です。」
笑いながら横断歩道を渡り、
向かいの小さなビルの地下へ誘った。
一段、下りるごと昭和の世界へ。
昔は何軒か入っていたが、
その後、長い間「えぞっこ」だけだった。
ようやく向かいにも出店したようだ。
少し、明るくなった気がする。
入るなり、元気な親方の声。
「オッ!いらっしゃい」
天井からアクリル板が吊るされている。
テーブルに置かれるタイプが多いが、
不思議とこれは違和感がない。
水をテーブルに置きながら、親方の決まり文句。
「なんにしやすか?」
モヤシラーメンを頼むと向かいは焼きそば。
すぐに、中華鍋が鋳物のガスコンロにぶつかる音。
「ガタゴト、ゴトゴト」
いいリズムの中、資料を渡し、軽く打合せ。
来た来た「モヤシラーメン」
餡かけが優しく麺を覆う。
綺麗だ。
熱々で、ふうふう。
とろみがいい感じに太麺に絡む。
シャキシャキのモヤシの歯ごたえ。
濃い目に見える汁に、
とろみが溶け込むといい具合になる。
美味しい!
向かいの彼は「お~!」と言い、箸を割る。
山になっている焼きそばは、これで普通もり。
一度蒸した細い麺は、モチモチとしているはずだ。
あっさりとしているが、
箸が止まらなくなるだろう。
美味しそうに顎を上げては頷いている。
少し食べたい。
彼は、そんなに量を食べないはずだ。
途中で、
「少し、手伝いません?」
「はい!!」
小さな皿に分けてもらった。
美味しい、嬉しい。
早くて、たっぷり。
美味しくてリーズナブル。
この4つを兼ね備えた中華を黙々と一気に食べる。
満足してテーブルの水を飲み干し、ぱっと立って会計。
職場に戻る前に本屋、銀行などへ寄ったり、散歩したり。
サラリーマン時代には、なくてはならない「まち中華」だった。
階段を上ると令和の街。
軽く、手を挙げて別れた。
何か話し忘れた気がする。
しばらく歩いて思い出した。
青空の電線の写真を見せて、
デジタルだって黒い電線があって使えるのだ、なんて話を。
まあ、たわいもない話。