ぼくたちの失敗/森田童子
<音楽が流れます、音量に注意>
思春期を過ごした花巻
マルカンデパートの15段のソフトクリーム。
割箸ですくった。
話に夢中になり、溶けだし慌てた。
毎年、春になり一斉に花が咲く北国。
急に眩しくなった太陽に俯き加減で歩いたり。
花巻で、ラジオの収録。
盛岡から出かけ、その後に古い友と会う約束。
15の春からのつき合い。
待ち合わせは茶房「あれい」
午後3時半、
遅めのランチの後にも関わらず、
はしゃいで「小倉ホットケーキ」
「お~」と声をあげると、
友は、軽く笑って半ば呆れ顔。
<「あれいの名物」小倉ホットケーキ>
銅板で焼く厚みのあるホットケーキ。
長い間、変わらない味。
2枚を繋ぐ粒々の餡。
甘すぎず、いくらでも口に入る。
「おまえは相変わらず、よく食べるなあ~」
彼の顔に書いてある。
「ホットケーキの女王様!」
「この花は、なんだっけ?」と聞くと、
「早く咲く何とか菊だ、なんだったかな?」
2人とも名前が出てこない。(笑)
帰りはオーナーの見送り。
「いつからでしたっけ?」と聞いた。
「昭和48年からだよ。もう49年目なんだよ~」
近頃はね若い女の子が連れ立って来る。
あちこち写真を撮って行くそうだ。
「おめはんだちも負けていられないよ」
と笑う。
「立派なカメラ、持ってんだから」
カメラはともかく、
ハッパをかけられ、なんだか嬉しい。
いつも明るいオーナー。
暖かくなった外での楽しい立ち話。
通路の奥に入口がある。
道と道を繋ぐ路地を意味する「あれい」
学生時代、この路は奥に長かった。
同級の女の子と入りかけ、
わけの分からない理由をつけて戻り、
いつもの喫茶店に。
あの頃、
このホットケーキの味を知っていれば、
ちょっとだけ大人の世界に早く入っていた気がする。
引き返したのは、小さな失敗?(笑)
1昨年、その時の人に会った。
蘇る思い出。
こっちは記憶にあって彼女は朧げ。
しまいには「え~ そうだった。絶対違う!」
と笑いながら、何度も首を横にふる。
長い喫茶店の壁に染みついた思い出。
今朝、ゆっくり起きて
テレビをつけると春の選抜は決勝戦。
高校生たちが甲子園の土の上で、躍動していた。
それにしても美味しいホットケーキだった。