Black Orpheus / Manhã de Carnaval - Anna Salleh and friends
<音楽が流れます、音量に注意>
花巻市石鳥谷の小さなパン屋さん「ルーツ」
午後3時過ぎ。
もうパンはないだろう。
前に来た時、
木箱に入ったニンジンが気になっていた。
ルーツのオーナーが出てきた。
「すいません、パンは完売です」
「今日は野菜です」
と言うと、
「決まったら呼んでください」
いつものように奥に戻った。
<農園 たそがれ>
元来種だというニンジン。
2袋を手にとり、玄関に置いてあった林檎も。
これは別の農園のもの。
会計しようと奥に声をかけた。
オーナーと少し話した。
野菜は、弟さんが作っているそうだ。
盛岡に帰ると早速、皮を剥いてみた。
小学校高学年になった頃の春。
母が突然、
庭の10畳ほどを耕し始めた。
花壇の手入れ程度はしていたが、
急に畑仕事を始めた母に父は、少し困り顔。
かまわず母は、あちこちから教えてもらい、
ひとり黙々と耕し続けた。
初夏になってキュウリが大きくなった。
食べるのが追いつかない。
雨の翌日は、
ど~んとでっかいのが見つかった。
いびつながら大根やニンジンも。
可愛らしい苺を見つけ、口に入れると顔が歪んだ。
後で知ったが、
少しでも家計を楽にしようと目論んだらしい。
「そこまでしなくても」と父は思ったようだ。
あの頃、
給料日の後は、すき焼きや刺身が並ぶ。
しかし、3週間後あたりからは野菜だらけの1週間。
サラダのほかに一夜漬けや天婦羅などが続く。
中学の2年生になって転校した。
そこは官舎で、庭はほんの少し。
しばらくすると玄関先の洗濯物を干す支柱の根元辺りに、
ニラが植えてあった。
給料日近くには、お浸し、汁にとニラだらけ。
ある日、
台所の窓のそばに小さな皿。
水に浸されたニンジンの残り。
みるみるうちに綺麗な黄緑の葉が伸びた。
元来種のニンジンは、
ごつごつとして逞しい感じで色が濃い。
小さく切って湯がくとますます色鮮やかに。
食べるときめ細かくて甘味を感じ、美味しかった。
少し野菜のことを調べてみようか。
切り残しを水に浸し、皿に置いてみた。
すると3日後ぐらいに小さな葉。
小さな木のようで可愛らしい。