Isnt She Lovely - Ben Paterson
<音楽が流れます、音量に注意>
長かった梅雨に続いてジリジリと狂ったような太陽。
ようやく北国の街に秋が来た。
あまりに急すぎて、朝晩は肌寒い。
慌てて出した長袖。
太陽が高い昼は、急ぎ足だとうっすら汗ばむ。
北国の短い秋。
仕事帰りの道。
蕎麦好きの方と肩を並べて歩く。
夜風にシャツの袖を下ろし、古い街並みを「蕎麦将軍」へ。
「温かい蕎麦もいいな」と思っていた。
店の前で、「おっ!」と小さい叫び。
蕎麦好きが指差す貼り紙に「新そば」
「もり蕎麦」に変えた。
<新蕎麦「もりそば」>
店に入ると若い親方が、
「お二人ですか?」
「はい」と言うと暖簾を下ろしに行った。
「・・・」
「蕎麦将軍」のラストオーダーは8時半なはず。
まだ早い。
実は、蕎麦が残り二人分で、
上手く二人連れでも来たら閉めようと思っていたところ。
明日から「新蕎麦」のつもりが、昼に混んで蕎麦が無くなり、
夕方から出したそうだ。
二人は小さく拍手で「やったぁ!」
蕎麦好きにはたまらない。
<蕎麦将軍名物 「とう飯」をヌキにした>
「ラー油?」
親方が自家製のラー油を垂らしてみたら美味しかったそうだ。
「お好みで、どうぞ、ほんのちょっとで十分です」
斜め向かいに座った人は「これはいい!」
どれどれと試す。
確かに、ピリリと味が引き締まり、特製のタレが染みた豆腐が、
いっそう美味しくなった。
しかし、卵は、どうして色々な物と合うのだろう。
ある人が言っていた「卵ってなんか魅力的!」
<かしわ天>
若い親方がテーブルに置くとニコニコ。
「せせりなんです」
ときた。
「おっ!」
二人の箸が動く。
「美味い!」
ふわふわから始まり、せせりの歯応え。
「かしわ天」は、あっという間に完食。
いよいよ「新蕎麦」
香り、ほのかな甘み、喉越し。
「美味い!」
蕎麦好きの人は、ほぼ半分ぐらいをタレを使わず、山葵を載せて食べた。
新蕎麦は、秋の代名詞。
ついこの間、蕎麦畑の白い可憐な花を見たばかり。
そう思っていたら、もう九月も半ば。
早めに暖簾を下ろしたので、親方と色々と話した。
昨年の冬に開店し、頑張っていたらコロナ。
店を閉め、テイクアウト。
しばらくしてランチ時間だけの開店を経てようやく元に。
食べ損ねた「ナスの冷たい蕎麦」も大好評だった。
冬の牡蠣の天婦羅がもう少しで始まる。
「次は何を食べさせてくれるの?」
お客さんにせがまれるそうだ。
期待に応えるため、彼は色々と考えていた。
大満足で、店を後にした。
二人は、明日の打合せの件でひと言かわし、
別々の方向へ。
<今日の昼過ぎ、北上川の遊歩道の秋桜も綺麗だった>
川縁を散歩した。
北上川沿いの「材木町裏石組」
全長約三百六十メートル。
南部藩時代から続く石組。
当時は河からの荷の積み下ろしが賑やかだったことだろう。
その上に連なるマンション群。
これも盛岡ならではの光景だろう。
猫君のお昼寝を邪魔してしまった。(笑)
川沿いの風も心地良く、揺れる秋桜。
コロナ禍の半年、
寒い冬が続いた。
次は雨ばかりで太陽が欲しいと思った。
かと思えば熱帯夜の続く残暑に溜息の日々。
ぼやきがちな日々。
気がつけば、急に秋。
ようやく、「秋桜」「猫君の昼寝」「新蕎麦」と平和を五感で感じた気がする。