月に一度は自然に脚が向かう店がある。
たいてい疲れた日が多い。
暖簾を潜り、
「いらっしゃい」
とニコリとご夫婦の顔。
沢山並ぶメニューを見て腕組み。
北田屋の名物「冷やしたぬき」を目論んでいたが、
温かいそばの辺りに釘付け。
「天ぷらそば定食で、お願いします」
<天ぷらそば定食>
そばが何とも美味しい。
優しい味で、飽きがこない。
煮物も、また好きな味。
人にはそれぞれの嗜好があり、好きな店があるが、
四十年近く毎週、通い続ける人達がいるのも頷ける。
「Kさんが、よろしくと言ってましたよ」と、
その人達の近況も知る。
ご飯から漬物まで、美味しい。
いつも黙々と食べてしまう。
<ごん八(紅葉卸)>
北田屋さんは、ワサビではなく「ごん八」
盛岡界隈の食文化の一つ。
大根おろしに一味の朱。
北田屋の蕎麦汁によく合い、味がしまり食が進む。
明治20年代、
岩手銀行赤レンガ館の向かいの辺りに、創業した北田屋。
昭和になって創業者の孫が紺屋町の北田屋紺屋町支店を開業。
そこで修業した八重樫八重吉さん。
昭和15年に暖簾を譲り受け、盛岡信用金庫脇の路地に移転した。
今は2代目の八重樫和夫さん。
そして昭和53年に始めた「冷やたぬきそば」
私も昭和から通う。
特にサラリーマン時代は、ランチか残業前のひと息。
同僚と行ったり、一人で食べたり。
今も変わらぬ佇まいとご夫婦の顔。
「じゃあまた来ます」
と店を後にした。
寛ぐ横丁の猫達。
何気ない光景の中にある自分の暮らし。
帰る頃になると少し赤味がかった空。
横丁の空は細長く、狭いが心なしか猫君も染まっていた。
今度は、「冷たぬき」か「冷風麺」だなあ~
横丁の突き当りには老舗蕎麦屋の「東家」さんも。
盛岡での何気ない日常の光景の中、
今日も終わりに近い。
思い出の多く残る店で今でも食べられるって、嬉しいものだ。
もし、ブログが昔からあったなら、
「サラリーマンランチ物語」なんて題にしたかも。
さて、帰ったらもう少し仕事をしよう。