Georges Moustaki - Ma solitude (1970)
<音楽が流れます、音量に注意>
「今夜は、蕎麦にしよう」
盛岡の老舗蕎麦屋の一つ「やまや」へ
蕎麦が美味しいと行列ができる店の一つだ。
それでいて、リーズナブルな価格。
暖簾を潜ると、
ふだんは行列の出来る店も静かだった。
テーブルに座ろうとして、
「あら?」
と知り合いが手招き。
しばらくして、彼女の前に登場した「つけ鴨そば」は、
コロナの話題をかき消した。
だいぶ前の冬、鴨の鍋は食べたことがある。
しかし、鴨のつけ蕎麦があったとは・・・
口が空いていたかもしれない。
「少し、食べます?」
もう一つ蕎麦猪口を頼んでくれた。
蕎麦もたっぶり。
その人は、ワサビをのせたりして、実に上手そうに食べる。
少し分けてもらって食べる。
軽く焼いた鴨の香り、
つけ汁に溶け込んだ甘い脂。
甘じょっばい汁をネギが引き締める。
「美味しい~」
そば喰い処「やまや」に行くと決まって、
更科、韃靼と挽きぐるみと三種類の蕎麦を並べた。
しだいに、年を重ねるにつれ、
三種から二種の組合せを楽しむ様になり、
近頃は、更科一枚とゲソ天、季節のかき揚げ、大根の粗おろし。
更科は、品のいい美味しさ。
細い蕎麦で、喉越しの良さは抜群。
始めは、タレをつけずに食べ、香りと本来の味を楽しむ。
箸を立てて、極細の短い切れ端も逃さない。
そんなわけで、
「やまや」に来るとメニューを見た記憶がない。
「つけ鴨そば」の衝撃で、改めてメニューを見た。
トッピンクは知っていたが、
殆ど温かい蕎麦を食べた事がない。
温かい天ぷら蕎麦、とろろ蕎麦もできる。
それに、ご飯もあった。
掻き揚げにタレをかければ天丼。
とろろ飯も。
つけ鴨の残り汁でご飯も食べたくなった。
固定観念に縛られているのか?
頭が錆びたのか?
帰り際、親方に、
「今度食べに来る時は、天ぷら蕎麦か天丼にしてみます」
と言った。
「またお待ちしています!」
いつもより、力強い声がした。
「どうして、今頃になって」と考え込むより、
「明日からの楽しみ」と思う事にしよう。