フジ子・ヘミング~ラ・カンパネラ(2015)
<音楽が出ます、音量に注意>
いなだ珈琲舎にて
昼下がり、次の打合せまで、
いなだ珈琲舎のカウンターの端っこでKブレンドを飲んでいた。
L字型に三人の男が、ほぼ等間隔。
マスターの小気味いい仕事ぶりを眺めながら、
次の企画を考えたり。
「思いつきはメモしよう」
と手帳を取り出そうとして、スマホが震えた。
数分の電話を終えて外から戻る。
珈琲にお洒落な蓋。
席に戻っても珈琲は、温かく美味しい。
真ん中の人がマスターに話しかけた。
「4月から東京に行くことになりました」
「え~ それはとても残念です」とマスター。
社会人になり、初任地が盛岡で4年になるそうだ。
二人の話の合間に、「盛岡は、どうでした?」と聞いてみた。
彼は、「そうですね~」と言って話し始める。
盛岡、岩手は、何を食べても美味しいし、
何より人がいいと言う。
来たばかりの頃、仕事で山里に行った時、
ハンドル操作をしくじり、タイヤが溝にはまってしまった。
ジャフを読んでも時間がかかるだろうと覚悟した。
すると、近くにいたお爺さんが声をかけると数人集まって来た。
あっという間に溝から脱出。
地元の人に色々と助けられた4年間だったそうだ。
「冬は転びました?」と聞くと、
特に初めての冬は、雪道で何度も転んだそうだ。
そんな事も想い出に若い彼は、あと数日で盛岡を後にする。
反対の端に座って一緒に聞いていた人が、
財布を出して立ち上がった。
するとマスターが言った。
「この方は、九州から盛岡にいらしたんです」
その人は、珈琲をお代わりしたそうだ。
最後に来た人、遥か南から来た人。
美味しい珈琲を求めて、
色々な人が来ては去って行く。
ある人が言っていた「ここは、人間交差点」
東京へ帰る若い常連さんにも挨拶をして、次の打合せに向かった。
ほっこりした心持ちでいると次の企画が湧き上がってきそうだ。