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Ella Fitzgerald - All The Things You Are
<音楽が出ます、音量に注意>
ある時期に通った店も、
近くでの仕事が終わると遠のいてしまう。
でも、時々「あの味」を思い出して足が向く。
そんな店の一つ、八幡にある「蘭々」
近くで会議が終わり、
連れだって紅い暖簾を潜った。
<僕は、蘭々の塩ラーメン>
透きとおったスープに、
鳥のチャーシュー、とろりとした半熟卵と緑。
透きとおって、コクがある。
美味しい。
メニューを見て迷う人に薦めた「黒タン」
摺り下ろした黒ゴマがたっぷりの名物の担々麺。
ちょっと覗き込んでからスープをひと口。
顔を上げ「コクがあって美味しいですね」とニコリ。
餃子も美味しい。
温まって満足。
話は時節柄、厄払いや還暦祝いの話になった。
「挨拶とか頼まれませんか?」
と聞かれて話した「Sさんの還暦の祝宴の話」
スピーチを頼まれていた。
席について「何を話そうか」と還暦の意味をググる。
「赤ちゃんに帰る」とある。
それでいこう!
話す順番は、最後。
既に盛り上がる会場。
すぐ前の方が還暦の意味を詳しく話し出した。
「・・・!」
終わって、もう自分の番だ。
咄嗟にバックから紙を手にしてマイクの前に立ち、
白い紙を広げた。
祝発起人から、沢山いじって欲しいと言われていたが、
粛々、朗々と始めた。
「本日はSさんの還暦祝いがこの様に盛大に行われ、」
祝宴に当たり、一言ご挨拶させていただきます。
さて、今までSさんから自慢話を聞いた事は一度もございません。
もしかしたら自慢する事が一つもないのかもしれません」
「昨晩は、深夜まで挨拶を考え、ようやく還暦の由来に辿り着きました。
ところが、つい先ほど神主様から、流石に詳しい由来のお話。これでは・・・」
その時、主役から「あれ、紙に何も書いてないよ!」
「ネタもばれましたので、Sさん、これからも元気で一緒に頑張りましょう!」
皆さんに、白紙を掲げて〆た。
Sさんとは一緒に「街おこし」を頑張ってきた。
この街の人達は、何かにつけて集まり、必ず呑み会へと続く。
気心も知れ、笑いが絶えない。
諸先輩からは「還暦は、まだ若い」との声。
押し寄せる高齢化社会の中で、三十代の顔もあり、ほっとした。
スピーチの事を話し終えると、
「まさかの時は使わせてもらいますね」
「どうぞ、タモリさんのパクリです」
タモリさんは漫画家赤塚不二夫さんの弔辞を粛々と読み上げ、
仏前に白紙を置き、手を併せたそうだ。