<音楽が出ます、音量に注意>
車のエアコンは25度設定で涼しかったのに今は、暖かい。
十月末ともなれば北国の朝晩の気温は一桁まで下がる。
クローゼットの奥に隠れたマフラーを探す。
そして「鍋」が恋しい季節。
盛岡から東北自動車道を北へ。
「晴れのち時々冷たい雨」の空模様。
秋田県境に近づくとトンネルが多くなり、両側に迫る山並み。
落ち葉が次々とまるで鳥のようにフロントに飛んで来る。
十和田で下り、大館へ。
想い立ち、電話した時間にギリギリ。
<昔のきりたんぽやの「きりたんぽ鍋」>
来た!
「何とも言えぬ香ばしさ」とは親方の受け売り。
毎年、いつも昼時間が終わるギリギリ。
食べ終わり満足していると親方が傍らに来る。
「どうでした?」が始まり。
店を閉める夏は具材の作り手に足を運んだり、
きりたんぽを焼く時に使う杉の串作りに精を出す。
瓶に詰めた透き通ったスープを手に「手間を惜しまない」と話していた。
親方が病で一時期、店を閉めたが、
娘さん達が贈答用だけは頑張って続け、その後、店を復活。
知ってはいたが久し振りに来た。
「昔のきりたんぽ」の味を残し、親方は逝ってしまった。
<お通しの三品>
中でも陸のキャビアと言われる「とんぶり」が大好きだ。
<味の事は木の看板に書いてあるのがいい>
スープを吸う前のシャキッとした持ち味の、
このきりたんぽをまずひと口、味わっていただきたい。
何とも言えない香ばしさ。
モチでもない、飯粒でもない、微妙な触感の「きりたんぽ」
煮崩れしにくく、続くもちもち感。
噛むほどに米の持つ甘味が広がる。
比内地鶏、舞茸、セリ、ゴボウ、ネギも脇役じゃない。
鍋の「こだわりの具」をまとめるのは透き通ったスープ。
食べ終えて娘さんが「どうでしたか?」と言った。
父が残した作り手との繋がりで、具材は揃うものの同じ味には辿り着けない。
自分なりの工夫を重ねている。
そして続けた「きりたんぽは、家庭料理」
親方も話していた。
「盛岡から来た甲斐があった」と告げた。
そうだ、帰ったら「美味しんぼ」56巻を読んでみなくては」