<音楽が出ます、音量に注意>
岩泉の中松屋本店に行った帰り、気になっていた場所があった。
8月に来た帰り道。
岩泉を出て十分ほどして助手席が騒ぐ。
「あれ何かな、寄ってみません!」
頭の中は、夜の打合せや明日の準備。
「今度にしましょう」
無機質な調子でアクセルを踏み続けた。
今日は用事を終え、
龍泉洞を懐に秘めた宇麗羅(うれいら)山を眺めたり、
少し街を巡ってみた。
「帰りに寄ってみましょうか?」と言うと、
「はい!」と目が輝く。
<鳥居煎餅店のピーナツせんべい>
盛岡に戻りひと仕事。
ひと息つきつつ、せんべいの袋を開けるとメール。
「寄り道してよかったですね。
最近、気になったことも後回しが多いですよね。前は寄り道ばかりして
面白がっていたのに。
シンプルなのに味わいがあって美味しいです。
余計な物が入ってないからかな?
それと街のどこからも見える宇麗羅(うれいら)山は、今日も霧の中でしたよね」
そういえば、そうだった。
「由来が書いてありましたよ。また行きたいです。お休みなさい。」
鳥居煎餅の袋に書いてあった南部煎餅の由来
建徳の昔、長慶天皇御遷幸の砌(みぎり)、
日暮れても夕餉(ゆうげ)の御支度が出来ず御難儀なされた。
その時、一行中の赤松某なる者が兵の兜を鍋として、
そば粉を練って火にかけ、胡麻を振りかけて奉った処、
其の風味を非常に御喜びになり、其の後も時折赤松に命じて
その独特の風味を御賞味遊ばされた。
今に伝わる煎餅型の表菊水、裏三階松(赤松の定紋)の模様は、
帝のお許しになったものと伝えられております。
煎餅店のお爺さんが話していた。
「昔はこの辺りに20軒ほどが煎餅を焼いていた。今はうちだけだが」
初めて聴く話にとても驚いた。
昨年から慌ただしく、神経が毛羽立ち、心が乱れていた。
「寄り道好き」は、影を潜めていた。
言われて気がついて、ほっとした。
「やはり、怖いのは自分の心」
飾り気のないシンプルな南部せんべいは、とても美味しく、
香ばしい胡麻沢山のせんべいの写真を撮るのも忘れた。