<音楽が出ます、音量に注意>
「なにも考えない、ひととき」なんて自分には無縁の様だ。
2年振りの田沢湖高原
あいにくの小雨で田沢湖は煙る霧の向こう。
「アルパこまくさ」のぬるめの露天風呂に浸かれば「はあ~~」
近くの乳頭温泉の身体に効きそうな乳白色のお湯も好きだが、
このまろやかさもお気に入り。
<「アルパこまくさ」撮影許可を頂いて>
小雨の露天風呂を一人占め
のんびり時間
自分の動きに合わせてさざめくお湯。
温泉の流れる出る音に混じって鶯が鳴いた。
「ケキョ、ケキョ・・・」
練習?
しばらくして見事な「ほう~ほけきょ」
「ちゃんと鳴いたね、聴いたよ」と微笑む。
もう一人の自分が笑う。
ゆっくりだが止まらない想いの流れ。
「6月も終わり、もう7月」
6月に三回忌だった。
丁度いい温もりに身を任せているのに、ちょっと切なくなる。
あの冬
寒い中、届いた林檎は、癌と闘う男の「命の林檎」
澄み切った甘さが喉を過ぎた。
とっても美味しかった。
酒は無理だろうから、珈琲でもどうかと想い、彼に電話した。
翌日になっても返事がない。
さわさわが、ザワザワに。
出れなくても必ず、翌日までには電話があった。
葬儀で奥さんから聴いた。
彼の携帯が震えていた頃、彼の意識はなかった。
毎年の楽しみは簡単に消えた。
胃を無くし、転移と闘いながら彼の造った林檎はことさら甘かった。
林檎の白い花咲く頃、彼はベッドの上で言ったそうだ。
「もう、いい」と。
もし、晴れ渡り、露天風呂から田沢湖が見えていたら、何を想ったのだろう。
風呂上がりのジワリと止まらない汗を拭きながら考える。
盛岡での打合せ時間を睨んでの寄り道。
いつも何かを想ってしまう。
「無になれない」そんな自分が嫌だったが、この年になると「それも、いいか」
自分を肯定すれば、肩も軽い。
些細な事でも絶え間なく、無茶苦茶考えて生きてやろうじゃないか(笑)