<音楽が出ます。音量に注意>
街中から30分も走れば、素敵な景色
里山の田園風景が好きだ。
穏やかな海を見ている様で。
水を張ったばかりの田んぼには雲や森が映る。
ぼちぼち始まっている田植え。
車から降りて眺めていると通りすがりのお婆さんが誰にともなく。
「綺麗だなぁ~」
そのまま、アスファルトの道に長靴の音を残し、
畦道に曲がると、ひょいひょいと歩いて行った。
「とても綺麗です!」と叫びたかった。
少し身体を東に向けると岩手山まで見えた。
何年か前の春
「夕暮れ時の岩手山って、いつも淋し気に見える」
そう言った人がいた。
黙って景色を眺めていた。
何かあったのだろうが、
里山の景色は、へたな「慰め話」より優しいに決まっている。
水面に映る雲の様に人の心も流れていく。
いつまでも同じ場所に立ち止まってはいれない。
人は人と関わらずには生きてはいけない。
一人で暮らしているつもりでも、誰かが歩く道をなおし雪をどけるし、
郵便も届けてくれる。
人が作って運んで並べたものを物を買う時、
型通りの言葉でも人と交わすひと言。
生まれてから人と関わり、知らないうちに自分が形作られてきたんだ。
里山の風景を眺め、鶯宿温泉に浸って盛岡へ
盛岡駅のフェザンに行った。
こんな日は郷土の料理「ひっつみ」がいい。、
いつでも食べられる「ひっつみ庵」に入る。
お稲荷さんが2個。
とても美味しい組み合わせ。
子供の頃に母がよく作ってくれた。
もっと厚くてモチモチしていた。
ちぎっては一番大きな鍋に投げ入れるエプロン姿。
幾つになっても忘れない。
家族はお代わりを続けてあっという間に空になった。
それを見て微笑む母。
子供は、いつも優しい母の姿を求めている。
通信簿を持って帰るとエプロンを外し、テーブルに広げるとみるみる般若になった(笑)
僕が三十代の時、まだまだこれからだったのに母は逝った。
ひっつみ庵のは、とても薄くてゴボウの風味がいい。
今はない料亭田中で食べた味。
勿論、リーズナブルになっているが味は引き継がれていると想う。
とても美味しい。
かけ流しの温泉と里山の風景とひっつみで、自身の労をねぎらった夜。
帰り道、
ショーウィンドウに映る自分の姿は、
とうに母を追い越している。
まるで、年の離れた兄貴の様じゃないか。
なんだか不思議な気持ちで歩き出した。