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北国の春。
空を見ながらのランチと珈琲の時間は、このうえない贅沢。
4月になっても降りやまない雪の日が続いた盛岡。
桜が咲いても霙が降り、花は凍えた。
そして、一気に春の陽射しが降り注いだ。
全身で浴びたくなった。
そんな時にうってつけの場所が、
雫石の田園風景の中にある農家カフェレストラン 「葉菜カフェ」
その日のランチは、
青空の下、
たっぷりの陽射しを添えて。
とても美味しい。
満たされてゆっくりと珈琲時間。
「いつも外ですよね~」と店の人。
「はい」と笑った。
中には、
小さな産直もあり、可愛らしい「カフェ・レストラン」
でも、たいていベランダの席。
青の世界を流れる白い雲。
ゆっくり見上げていると、
いろんな人の顔が浮かんでは消えていくことがある。
その時は、みんな優しく微笑んでいる。
生まれ育った家は、
丘の麓から中腹にかけて三段に家が並んでいた。
その一番上の端っこだった。
麓から街が平らに広がり、川や盆地の向こう側の北上高地も見渡せた。
丘一面に桜が咲く。
続いて山吹色に染まり、日陰には菫(すみれ)が咲いた。
東西に走る通りも見渡せた。
朝、父が、その道を歩いて行くのを見送った。
岩手と宮城の県境の街、一関。
あの街の記憶は、なぜか、たいてい青い空。
夜に降った雪が朝には止み、青空が広がる。
丘を見上げると、青を背景に黒い桜の枝にふわっと積もる白。
「やほ~」と下から叫ぶとハラハラっと舞い落ちる。
それは、ふわっとした風ではなく、自分の声のせいだと想っていた。
真剣な顔をし、小学生にしては、
大柄だった自分の後ろ姿が見える気がするのだ。
ありえないのに。
椅子にもたれて、ちょっと姿勢がだらしない。
穏やかな時間。
しばらくして、少しだけワクワクしてきた。
座り直して、残りの珈琲を飲んで立ち上がった。
「さて」
会計をしにドアを開けた。