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学生時代の夏
奨学金が出たり、バイトのお金が入ると連れ立って鰻を食べに行った。
「美味い! なんでこんなに美味いんだろう」と大盛りのうな重。
食べ終わると、青森出身のY君が言った。
「次は、いつ食べられるかな? ところでさ、お盆は返るの?」
「どうしようかな」
「親がさ、いつ帰帰って来るんだって電話くるなあ~ そろそろ」
二人で笑った。
「帰れば、必ず、「就職どうすんだ!」とくるよなぁ~」
「みんなは会社訪問、血眼だね」と言うと、
「労働意欲無いんだよね、オレ達」
急に真面目な顔で、Y君、
「田舎は、好きなんだ、でも田舎なんだよなぁ~」
笑いながら大盛りのうな重は、あっという間に消化して、
「Y君、茶店に行くか、何か食べに行く?」と誘う。
「美味しい」のはしごも、よくしたものだった。
あの頃、ランチして茶店で珈琲飲んで、夜は、新宿のネオンの中を流離い、
時には、深夜喫茶で始発待ち。
そんな事を想い出しながら、平成最後の夏の鰻の焼き上がるのを待っていた。
「なにぼっ~として、そんな時、何考えてるか知ってるよ」
へぇ~
「昔の想い出に浸りきってる」
よくご存じです。
盛岡駅前、「開運亭」にてうな重
ここでは通年で国産の鰻が食べれる。
昔は、岩手の至る所で鰻の旗を見た気がするが、
近頃では、予約なしで食べる処がぱっと浮かばない。
焼き上がった「うな重」を見つめれば、ジワリと口に広がるアミラーゼ
ふわりと柔らかい、タレもいい感じで甘すぎず、とても美味しい。
いつも、一口食べてから、山椒を多めにふりかける。
幸せだなぁ~
土用の丑の日は、年に数日ある
今年は、7月20日と8月1日と2日。
鰻はビタミンAとB群が多く、疲労回復、食欲増進。
日本人は季節ごと、山菜を食べ、秋刀魚、キノコと四季に渡って「旬」がある。
「食彩の国」
美味しさに満足しては、また想い出す。
学生時代に憧れだった鰻と銀座。
あの頃は、二つとも覚悟がいった。
携帯のない時代、あの頃は女の子に電話するのにも覚悟がいった
どこで鳴るか分からない黒い電話。
誰が出るかも分からない。
高まる胸、受話器を握る手は汗ばんだり。
メモを見ながらダイヤルを回すと耳に全神経を集中して待つ。
「千葉と申しますが、Kさんいらっしゃいますか?」
「少々お待ちくださいね」
「もしもし、電話、待ってたよ~」
だったら一番に出て欲しい。
電話の鳴る場所が分かっていると余裕のダイヤル。
今は、個人と個人が繋がる携帯。
メールなんて深夜でもさほど躊躇のいらない時代。
あの緊張感は、今、どこだ?
開運亭を後にして、外へ出ると熱気がアスファルトから立ち昇る。
北国の夏祭りが始まる。
青森のY君は、田舎に帰って来るのかな、今、どうしているのだろう。
全身に滲み出す汗、でも元気に歩き始めてスマホを手にした。
「もしもし、昨日はありがとうございました、今、大丈夫ですか? 」

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